サシバ50年 記念講演会を開催
県と宮古野鳥の会による伊良部島でのサシバ飛来数調査がことしで50回目を迎えたことを記念した講演会(主催・市)が16日、伊良部島小中学校体育館で行われた。岩手大学講師の東淳樹さんがサシバの生態や渡りの理由などを解説。同会の仲地邦博会長が調査の経緯や成果を報告し、飛来数減少の対策を提言した。また同校児童生徒会も保護月間の取り組みを発表。サシバの保護につながった半世紀にわたる調査の意義や重要性を再確認した。
飛来数調査は1973年から始まり、例年「寒露」の入りから2週間実施され、地元の児童生徒も参加して貴重なデータを蓄積するとともに鳥獣保護思想の普及啓発に寄与してきた。日本で最も歴史のある自然環境調査の一つとされ、サシバの個体数を把握する上で重要な役割を果たし、調査結果から減少傾向にあることが分かり、環境省の絶滅危惧種Ⅱ類指定の根拠としても活用された。
基調講演で東さんは世界にサシバの仲間は4種類おり、日本のサシバはインドに生息するメジロサシバから種分化したと紹介した。仮説として、かつて地球が温暖だった時代にメジロサシバは日本の東北北部まで広く分布していたが、第3紀後半に入り寒冷期になった頃に九州以北では越冬できなくなり「南に渡って春には戻って繁殖する生活を始めたサシバがいたのではないだろうか」と自らの考えを述べた。「サシバの縁によって我々は日本各地、台湾やフィリピンの人たちとつながることができた。今サシバは減少しており、今度は人間が手を差し伸べる時期が来ている」と保全を呼び掛けた。
仲地会長は1980年代に平均3万6千羽だった飛来数が2010年代には1万3400羽と減少傾向にあり、伊良部地区の森林率も75年は44%だったが開発などにより07年には15%まで下がったことから「サシバの保全は繁殖地、越冬地、中継地がそれぞれ減少の原因を取り除く必要がある。中継地の我々はサシバが休息やエサ取りに利用するリュウキュウマツを増やし『サシバの森』を造らなければならない。これ以上の森林減少は食い止めないといけない」と訴えた。
同校児童生徒会は保護月間の活動としてサシバの俳句募集や保護ポスターの作成、保護パトロール出発式への参加、下地島の清掃などを行い、意識づけのため缶バッジを作って全児童生徒・教員に配布した。生徒たちは「この活動をもっと伊良部島、宮古島の人に知ってもらいたい。考えは世界規模で、行動は足下から。私たちに何ができるか考えよう」と呼び掛けた。
飛来数調査を始めた同会顧問の久貝勝盛さんは「苦難の歴史だった。何度も挫折し、やめようと思った。始めた時はまさかサシバ保護の原点になるとは思わなかった。県や野鳥の会の支援があったからできた。地域の保護活動で密猟がなくなったことは賞賛に値する。100回目を目指してほしい」と語った。