
教育現場へ20冊寄贈 起源から保存活動への一冊 著者の長濱氏 宮古馬の過去、未来
宮古馬の起源や歴史、保存活動を網羅した書籍「宮古馬ールーツを探る―」の贈呈式が29日、市役所で行われた。著者の長濱幸男氏が市教育委員会に20冊を寄贈。市内の中学校や図書館、博物館などに配布される。長濱氏は「中学生や市民に宮古馬のことをもっと知ってほしい」と語り、教育的・文化的意義を強調し、本の内容や執筆の背景についても説明があった。
贈呈された書籍は、宮古馬の起源や歴史、保存活動について詳細に記述されており、馬の遺骨が出土した遺跡の一覧や、宮古馬の体高を推定した表、飼養者と馬の写真などが掲載されている。
長濱氏が長年にわたり宮古馬の保存活動を行い、そのルーツを探る調査を基に執筆されたもので、市内の中学校、図書館、博物館などに計20冊が寄贈された。
贈呈式で長濱氏は「まず序章を読んでもらえれば本全体の概要がわかるようになっている。中学生や市民にぜひ読んでほしい」と本書の構成や狙いについて述べた。
本書は5月15日に発行された沖縄学術研究双書。全5章で構成され、第1章では「宮古馬とは」と題しその基本的な定義を概説。続く第2章では保存と活用の実態、第3章では馬の渡来ルート、第4章で朝貢貿易における馬の役割、そして第5章で江戸期の献上馬や在番制度との関係にまで言及している。また写真資料なども豊富に掲載し、歴史学・考古学・民族学の視点から総合的に宮古馬を捉える内容となっている。
受け取った市教育委員会の前泊直子教育長職務代理者は「この一冊で宮古馬の歴史や保存活動が立体的に理解できる。子どもたちにも著者の情熱や歩みを感じ取ってほしい」と謝辞を述べた。
さらに市教委としても宮古馬保存会と連携し、繁殖や活用を目的とした「宮古馬ステップアップ事業」に取り組んでいる現状を報告し、今後の協力関係の継続を求めた。
宮古馬は宮古島固有の在来馬で、長年にわたり存続の危機に直面してきた。だが近年は保存活動が進み、文化的なシンボルとして再評価が進んでいる。本書は、そうした流れを学術的に裏付け、市民に広く伝える重要な資料。今回の寄贈をきっかけに、宮古馬の存在とその価値が次世代へと受け継がれ、教育や地域振興への活用が期待される。
長濱氏はまた「宮古馬とその祖先・琉球馬が果たした役割、そして琉球大国誕生の背後に馬がいたという視点で続編をまとめているところ」と今後の研究意欲も示した。