
サンゴ保全のカギは陸域対策か 白化進行に新評価を発表 琉大・北里大研究チーム 底質リン量との関連性
北里大学海洋生命科学部の安元剛講師と琉球大学農学部の安元純助教を中心とした研究チームがこのほど、サンゴ礁の保全に向けた新たな評価方法を確立した。調査の結果、サンゴが底質リンの影響を受けやすいことを示し、底質中のリンが多いほど、サンゴの密度が下がり、白化が進む傾向がみられたという。この研究は7日、石垣市にある環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターで発表した。
サンゴ礁は生物多様性が高く、漁業や観光などに重要な役割を果たすが、気候変動や沿岸開発により世界的に衰退が深刻化している。特に石西礁湖では1998年の高海水温による白化現象以降、衰退が進行し、陸域から流入する栄養塩が影響を与える可能性が指摘されるも、定量的な評価が難しく、対策が不十分なことも課題であった。
同研究チームは人間活動がサンゴの密度や白化に与える影響について底質に吸着しているリンの量を測定することで評価。サンゴの減少と底質リン(EPS)との関連性を統計的に分析し、特に底質中のEPSに着目することでサンゴ群集への影響を解析。陸域由来のリンがサンゴ礁生態系に及ぼす影響を調査したという。
それによるとEPSの濃度が高い地点ではサンゴの密度が低下し、白化が進行する傾向が確認されたとのこと。
具体的には底質リンの濃度が0・3~0・71マイクロ㌘/㌘を超えるとサンゴ群体数が顕著に減少し、多くの属のサンゴ密度が有意に低いことが判明。特定の主要なサンゴ属においてはさらにEPSの影響を受けやすいことが示されたという一方で、Montipora(コモンサンゴ属)やPorites(ハマサンゴ属)はEPSへの耐性が高いことも示された。またEPSが増えると藻類が増加したという。
その上で底質リンの起源として畜産業やエビ養殖の排水など、陸域の人間活動が影響している地域が多数あることも指摘されている。
この研究結果は7日付で「MarineBiotechnology」誌に掲載。サンゴ礁保全と陸域負荷対策の重要なデータとして、今後の環境政策や地域産業の持続可能な発展、対策策定において重要な情報となり、サンゴ礁保全と地域産業の持続可能な発展を目指すための基礎データとして、石西礁湖自然再生協議会を含む関係者間で共有・活用される予定とのこと。