(前列左から)大城さん、時津さん、国梓さん、向井田さん、もりおさん =8日、アトールエメラルド宮古島・櫂艪の間

一席の国梓氏らを表彰 第8回宮古島文学賞授与式 「人の尊厳問い直す一考に」

 宮古島市文化協会(饒平名和枝会長)は8日、市内下里のホテルで第8回宮古島文学賞の授賞式を開いた。前泊直子教育長職務代理者が来賓として参加し、関係者が一堂に集って受賞者3人の栄誉をたたえた。「島の塔頭(タッチュー)と電照菊」で一席に輝いた国梓としひでさんは、「受賞することができ、大変光栄に思っている」と語った。
 国梓さんは沖縄県出身。これまでに第33回新沖縄文学賞や、第50回九州芸術祭文学賞地区優秀賞などを受賞した実績もあり、同文学賞は今回の「島の塔頭(タッチュー)と電照菊」で一席を射止めた。この作品は、7年前に仕事で訪れたシンガポールで、旧日本軍鉄道のことを知りったのが創作の始まりだったといい、「沖縄にいるミャンマー実習生からの聞き取りや菊農家での作業を体験して、ようやくこの作品を書くことができた」と振り返った。
 その上で「この作品が戦争の不条理さ、醜さを通じて人間の尊厳を問い直す一考になれば幸い。今回の受賞を糧(かて)に、これからも創作活動に精進していきたい」と喜びを語った。
 二席を受賞したのは鹿児島県在住の向井田周明さんの作品。「アサギマダラ」と題し、地球環境の急激な変化に伴い、「火星」という新たな島への移住計画についての物語を描いた。「今回の受賞は、自分の創作の方向性にも一定の評価を頂けたのだろうと深く感謝している。今後も創作を続けていく上で、大きな励みになった」と述べた。
 佳作を受賞したのは長崎県出身在住の時津逸さんの「春の嵐」と題した恋愛短編小説で、「今後は、日常の生活の中で浮かんでくるアイデアや降ってくるような言葉を丁寧にすくいとり、どこか読み手の心の琴線に触れるような表現でアウトプットしながら、コツコツと小説にしていきたい」と話した。
 饒平名会長は「今回も作者自らが発見した島を描き、文学の力で掘り起こされる魅力や希望ある未来へと思索を深めた作品となっており、時間軸、空間軸の広がりが作品内容を深くするなど、心揺さぶる作品が選出された」と高く評価した。
 大城貞俊選考委員は「98編の応募作から選び抜かれた作品であるだけに、作者の想像力と創造力を遺憾なく発揮した作品が多く好感を持てた。さらに一歩の精進を期待したい」と語った。

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