社説 農業委員選考の正当性調査⑤
市から適法に事務委任を受けた農業委員会が、規則に準じて「評価・選考」した農業委員の候補者を、市上層部が市長の総合的な判断という曖昧な「評価・選考」に基づいて、人選変更を行ったうえ、規則を逸脱して不当に組織の組み替えまで行った。
嘉数登副市長は「市長から変更についての明確な指示はなく、『市長の考え』に沿う調整案として中立委員の増員を含む変更案を市幹部で作り、市長に承諾を得た」と説明し、中立委員の選考経過を「中立委員の応募者は2人のみであり人選の余地はなかった」とした。
委員から「評価点数が最下位の中立委員候補を昇格させるにあたり、公平性を担保する新たな評価基準等を設けずに2人体制ありきで繰り上げ選考したのか」と問われ、嘉数副市長は「評価委員会の選考を尊重したうえで、長く農業行政に携わった市長の経験や見識に基づく『総合的な判断』による選考であり公平性は担保されている」と主張。委員からは「そんな道理はない」とあきれ声が飛んだ。
市議会定例会でも調査特別委員会でも同様の答弁を繰り返してきた市上層部に転機が訪れる。農業委員会が面談内容を記した備忘録を調査特別委員会に提出したのだ。そこには、座喜味一幸市長が農業委員会の選任事務や評価委員会の審査手法を非難する文言や、座喜味市長の推す候補者との入れ替え要求に加え、あろうことか座喜味市長が評価点数の書き換えを示唆する記述まであった。
この備忘録の真偽を問われた市幹部は「記憶にない」と声をそろえ座喜味市長においては委員から「市議会では中立委員候補者を『全く知らない』と発言していた」と問われ「市議会でそのように答えた覚えはない」と前置きし「行政チャンネル等で候補者を知り、今後の農政運営に有効な戦力になると考えていたので、同候補者の評価点数の低さに違和感を覚えた」と答弁するありさまで、その姿勢からは市長の総合的な判断というものを市長の恣意(しい)的な判断と読み替えることが容易にできる。(続)