腐食したトラッシュの搬出作業を行う農家 =平良松原

市全域で堆肥製造へ 地域主導で循環型農業

 宮古島市(座喜味一幸市長)が、サトウキビの機械刈りで出る残さ(トラッシュ)を活用した堆肥製造施設を、市内全域に整備する方針であることが1日までに分かった。現在久松地区で実証に取り組んでいる事業を拡大するもので、地域主導での循環型農業推進を目指すという。キビの機械刈り普及により、ほ場から持ち出されるトラッシュが増加し、地力の低下などが懸念されている。また、地下水保全のために化学肥料の抑制を求める声もある。
 トラッシュとは梢頭部や葉がらなど、製糖の原材料としては不要な部分のこと。手刈りが主流だったころはほ場に残され、すき込まれて有機質肥料となっていた。機械刈りの進展で製糖工場に持ち込まれるトラッシュが大幅に増加。敷地を圧迫しているだけでなく、有機質の流出による地力低下も懸念されている。
 また近年、原材料の高騰により化学肥料の値上がりが農家経営の負担となっており、有機質肥料の重要性が高まっている。昨年度国が実施した高騰支援でも、ヒマワリなどの緑肥活用など、化学肥料低減に取り組むことが求められた。
 市は現在も、各工場からほ場へのトラッシュ還元に補助を行っているが、キビは繊維が固いため、ただ積んでいるだけでは、腐食して肥料として利用可能になるまで数年かかるという課題がある。そのため市は久松地区で、バガスや糖蜜を混ぜて腐食を進める実証事業を実施。混合して重機でかくはんすることで温度が上がり、腐食しやすくなるという。事業現場で1日、自らのほ場にまくために搬出作業を行っていた農家は「畑に肥やしを運んで悪いことは一つもない。これからもトラッシュの活用を続けていく」と述べた。
 市はトラッシュからの堆肥製造施設を、市内全域に拡大する方針。具体的な場所は決まっていないが、平良2カ所・下地1カ所・城辺2カ所を検討。伊良部と下地では、既存の堆肥センターを活用する予定。施設の規模はセンターを参考にするという。
 座喜味市長は6月上旬、各製糖工場関係者と意見交換を実施。協力して推進していくことを確認した。また、トラッシュの運搬や製造施設の運営、堆肥の散布を地域が主体となって実施する循環型農業モデル事業を協議している。

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