「質の高い保育」を研究 セミナーに約300人参加
平良西里の心愛保育園(砂川美恵子園長)は3日、未来創造センターで、県外識者を講師に招き保育実践研究セミナーを開催。保育園での虐待事件や不適切保育を起こさないよう、子どもの発達を深く理解するために開いたもの。市内の幼児教育関係者約300人が出席し、会場はほぼ満席となった。砂川園長は「昨今の事例に深く心を痛めている。ともに学びを深め、子どもたちのために質の高い保育を提供していこう」と呼びかけた。
砂川園長はセミナー冒頭で、「昨今相次いで明らかになる保育園での虐待事件や不適切保育について、日頃から現場で健やかな育ちを支えている皆さまと同様に胸を痛めている。発達の道筋から理解を深め、子どもたちのために質の高い保育を提供していこう」とあいさつ。また、台風直後にも関わらず多数の参加を得たことに感謝を述べた。
講師は東京大学大学院教育学研究科の野澤祥子准教授と、静岡県でこども園などを運営する社会福祉法人和光会の志賀口大輔理事長が務めた。
志賀口理事長は「不適切な保育と言われないために」と題して、自身の運営する園での取り組みを紹介。「『生きる力を大切にする』、『一人ひとりを大切にする』と一口に言うが、理念があいまいなままでは園として行動が統一できない」と指摘。
その上で「子ども時代だけではなくむしろ大人になってから、自分のためではなく他者のために生きることができる人に育ってほしいと願っている」と説明。乳幼児期という未成熟な時代に助けてもらう体験が、将来助ける側としての感覚を育むと説いた。
野澤准教授は「これからの時代の保育に向けて」と題し、社会の変化▽幼保小学連携カリキュラム▽こども家庭庁▽子どもの発達研究―など、広範にわたり保育を取り巻く状況を解説。
接続期のカリキュラムについては「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を手掛かりに、園と小学校が子どもの育ちを中心に据えた対話を通して相互理解・実践を深めていくことが大切」と説明。乳幼児期の子どもは世界の原則をできるだけ幅広く調べる「発見学習」を行っており、学齢期の児童は学んだことを反復して無意識にできるようにする「完全習得学習」に取り組んでいると述べた。