ふんからジュゴンDNA 昨年、伊良部佐和田で採取 「生息示す強い証拠」

三重県の鳥羽水族館で飼育されているジュゴンの「セレナ」=提供・県自然保護課

 沖縄県自然保護課は6日、2022年6月に伊良部佐和田で採取された大型草食動物のふんから、ジュゴンのDNAが検出されたと発表した。県の調査でのDNA検出は初めてのことで、本紙の取材に同課の担当職員は「県周辺海域にジュゴンが生息していることを示す強い証拠が得られた」と述べた。また目撃情報などのデータから生息範囲を推定したところ、宮古周辺では近年、分布域が増加傾向にあることが確認できたという。22年度に実施した「ジュゴン保護対策事業」の報告にまとめた。
 ジュゴンは環境省レッドリストなどで、絶滅の危機に瀕している種と指定されている。県は西太平洋域分布の北限にあたるが、個体数は極めて少ないと推測されており、本島周辺では19年を最後に有力な個体の目撃情報はない。国内では三重県の鳥羽水族館で唯一、「セレナ」と名付けられた個体が飼育されている。
 県は16年度から生息状況調査などを実施。22年度は本島周辺の喰み跡調査やふんのDNA解析、分布推定に関するビッグデータ分析などを行った。
 22年6月と7月に、伊良部佐和田を含む3カ所から、ジュゴンの可能性がある大型海産草食動物のふんを漁業者などが採取。同課に提供された試料を分析したところ、伊良部ともう1カ所のふんから、ジュゴンのDNAが検出された。
 これまで国内のジュゴンは沖縄本島周辺にわずかに生息するという考えが通説だったという。環境省や県の調査によって、先島諸島周辺海域にも広く生息していることが確認された。
 目撃情報や自然環境データなどを用いたモデル分析で、ジュゴンの分布域とその時系列変化を推定。宮古諸島周辺では2000年代で分布域の減少が底を打ち、10年代から増加傾向にあることが分かったという。繁殖による個体数の増加や、フィリピンなど南方からの移入などの影響が考えられるとしている。
 県はジュゴンの保護や餌場となる海草藻場の保全への県民の意識高揚を図るため、広く普及啓発活動を行なう必要があるとする。目撃情報が多い地域での勉強会や、網漁業などで意図せず捕獲してしまった場合のレスキュー講習会などを想定。また、目撃情報を効率的に収集するために、専用ページ(QRコードから)を作成。情報の提供や閲覧を行うことができる。

目撃情報提供ページ

関連記事一覧