「半導体」はなぜこれほど重要なのか 国家安全保障支える重要条件に
近年、「半導体」という言葉をニュースで目にする機会が増えている。半導体はスマートフォンやパソコン、自動車などに使われる部品として知られているが、現在では経済だけでなく、安全保障にとっても重要な存在となっている。その背景には、現代社会や軍事が、半導体を使った電子機器や情報処理技術に強く依存しているという事情がある。
そもそも半導体とは、電気の流れを細かく制御する性質を持つ材料や、それを利用して作られた電子部品のことである。半導体によって、機器は大量の情報を処理したり、通信したり、周囲の状況を感知したりできる。いわば半導体は、現代のデジタル社会を動かす「頭脳」や「神経」のような役割を担っているのである。
その重要性は身近な製品を見ると分かりやすい。例えば自動車には、エンジンやモーターの制御、安全装置、運転支援システムなど、さまざまな場所で半導体が使われている。半導体が不足すれば、車体やエンジンを用意できても完成車を生産できない場合がある。スマートフォンでも、通信、画像処理、データ保存などの機能を半導体が支えている。つまり半導体は、単なる部品ではなく、現代産業を動かす基盤なのである。
「AIが過ちを犯したとき、責任を負うのは現場の指揮官か、プログラマーか」軍事・安全保障におけるAI利用の危険性
この役割は軍事分野でも同じである。レーダー、人工衛星、通信システム、無人機などには半導体が使われている。例えばレーダーは、電波を送受信して航空機や艦艇などの位置を把握するが、その情報処理には半導体が不可欠である。無人機についても、飛行制御、通信、カメラによる画像取得など、多くの機能を半導体が支えている。
さらに、人工知能(AI)を利用した情報分析や画像認識にも高性能な半導体が必要となる。現代の安全保障では、兵器そのものだけでなく、情報を迅速に集め、分析し、判断する能力が重要になっている。そのため、半導体技術の優劣はAIや軍事能力にも影響し得るのである。
各国の分業体制で作られる「半導体」
もう一つ重要なのが、半導体が世界各地の企業による分業によって作られている点である。半導体は、設計する企業、製造する企業、製造装置を作る企業、材料を供給する企業など、多くの国や地域が関わって完成する。日本も製造装置や材料などの分野で重要な役割を担っている。そのため、災害、紛争、輸出規制などによって特定地域の供給が途絶えれば、世界の企業や産業にも影響が及ぶ可能性がある。
この問題を象徴するのが台湾である。台湾の半導体企業は世界の先端半導体の生産で重要な位置を占めている。そのため台湾海峡をめぐる緊張が高まれば、地域の安全保障だけでなく、世界の半導体供給にも影響する可能性がある。半導体の供給網が一地域に集中することは、経済上の効率性がある一方、安全保障上のぜい弱性にもなり得る。
こうした事情から各国は、国内の生産能力を確保するとともに、調達先を分散し、供給途絶のリスクを減らそうとしている。日本でも半導体は経済安全保障上の重要物資として位置付けられ、国内生産基盤の強化が進められている。
さらに、先端半導体はAIや高度なコンピューターなどにも利用されるため、米中を中心とする先端技術競争とも深く関係している。米国が中国に対して先端半導体や半導体製造装置などの輸出管理を強化しているのも、単なる貿易政策ではなく、先端技術と安全保障をめぐる競争という側面があるからである。
ただし、半導体を安全保障だけの問題として考えることにも注意が必要である。半導体産業は国際的な分業によって発展してきたため、規制を強化しすぎれば企業活動や技術開発に影響する可能性がある。重要なのは、すべてを国内で生産することではなく、自国で確保すべき技術や生産能力を見極め、同盟国や友好国との協力によって供給網を分散することである。
半導体が安全保障上重要になったのは、それ自体が兵器だからではない。経済、通信、AI、情報、産業、軍事が半導体によってつながっているからである。半導体の安定供給と技術力を確保することは、現代国家の経済力と安全保障を支える重要な条件になっているのである。
文/和田大樹 内外タイムス






