陸上自衛隊が身分を隠して情報収集か 国内有識者ら対象に愛国心なども調査
熊本日日新聞のスクープが、スパイ防止法制定に前のめりの高市政権を揺さぶっている。陸上自衛隊の「現地情報隊」が民間人や有識者らの愛国心や思想信条に関する情報を組織的に収集・調査していたという疑惑だ。
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防衛・安全保障上の法的根拠がないまま文民統制(シビリアン・コントロール)を逸脱して行われていた可能性が指摘されており、大きな波紋を呼んでいる。
現地情報隊は、陸上自衛隊中央情報隊(東京・埼玉、朝霞駐屯地)の傘下にある対外情報部門で、海外でのインテリジェンス(情報活動)を任務とする組織。2003年からの自衛隊イラク派遣で現地情報が乏しかった教訓を踏まえ、海外活動を目的に07年に新設された。自衛隊の中で唯一、ヒューミント(人的情報収集活動)をする専門部隊で、約50~60人の隊員が所属しているという。
問題視されるのは、海外活動が目的にもかかわらず、実際は隊員の大半が国内で日本人の個人情報を収集しているとされることだ。調査対象は、大学教授や研究者、NPO法人代表、ジャーナリストなどの有識者や一般市民など数千人規模に及ぶとされる。
収集されていた主な項目には、単なる氏名や連絡先だけでなく、個人の内面(愛国心、国家への姿勢、対自衛隊感情)や政治的傾向、個人の交友関係や人脈ネットワークが含まれていたと報道されている。
自衛隊のイラク派遣にあたっては、当時の小泉純一郎政権が野党や専門家などから激しい批判を浴び、国を挙げての議論となった。それだけに、自衛隊に対して批判的かどうかといった情報まで収集していたものと想像できる。
自衛隊による市民の監視・情報収集をめぐっては、陸上自衛隊情報保全隊(現・自衛隊情報保全隊)による市民活動の監視が訴訟に発展したことがあり、仙台高裁はプライバシー権の侵害を認定し、国に損害賠償を命じる判決を言い渡した(国は上告を断念)。
今回も日本国憲法第19条で保障された「思想及び良心の自由」を侵し、行政・軍事機関が個人の内心を監視・選別しているのではないかと懸念されている。また、熊本日日新聞の独自取材により、元隊員らの証言として「情報収集に『愛国心』を利用した」「法的にグレー、あるいは違法という認識があり葛藤があった」といった事実が報じられている。
新聞の取材に対し、東京都立大の木村草太教授(憲法学)は次のようにコメントしている。
「収集される情報の利用目的が特定されていない上に、センシティブな情報を適正に管理できているかも疑問だ。内心を探ることは思想弾圧にもつながり得る。探知の段階でコントロールをかける必要がある」
元大阪市長で弁護士の橋下徹氏はこれら一連の報道を受け、「国旗損壊罪を認める政治の下では、官僚組織はこのような愛国心調査をすることに躊躇(ためら)わない」と政府を批判した。
国旗損壊罪をめぐる政治的議論の問題点が早くも明るみに出た形だが、スパイ防止法制定に熱心とされる高市政権の支持率低下が一層進むのではないか。
文/横山渉 内外タイムス






