GMO懸賞金「最大1億5000万円」受け取った場合の税金は 手取り4200万円差もあり得る理由
ハッカーから約80億円を要求されたGMOインターネットグループが、犯人の特定・検挙につながる情報に、最大約1億5000万円の懸賞金を出すと発表した。
仮にこの懸賞金を1人で受け取れば、税金が約7900万円かかり、手取りが半分を下回るケースもある。ところが、税法上の扱いによっては税額が約3700万円にとどまる。同じ金額なのに、なぜ約4200万円もの差が生じるのか。
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80億円の要求を拒否し、懸賞金で対抗
攻撃を受けたのは、FX(外国為替証拠金取引)の自動売買などに使われる「お名前.comデスクトップクラウド」だ。顧客情報が外部に持ち出され、一部の利用者からは身に覚えのない取引の報告も寄せられている。
GMOは攻撃者の要求を拒否し、「GMOサイバー犯罪撲滅・懸賞金」を創設した。上限は制度全体で総額100万米ドル(同社の参考換算で約1億5000万円)。11月5日18時時点で、情報提供は累計839件に達している。
情報を提供すれば必ず支払われるわけではない。情報の新規性や正確性、検証可能性、犯人の特定・検挙や事件解明への寄与などを審査し、支払対象と金額が決まる。
手取りは7100万円か、1億1300万円か
日本に住む個人が全額を受け取り、必要経費や他の所得、所得控除はないものとして、2026年の税率で計算する。
「雑所得」に当たる場合、所得税・復興特別所得税・住民税の合計は約7900万円。手取りは約7100万円だ。
一方、「一時所得」なら、最高50万円の特別控除を引いた残りの2分の1だけが課税対象になる。税額は約3700万円、手取りは約1億1300万円となる。
差額は約4200万円。ただし、これは所得区分による税負担の違いを示す仮定の試算で、今回の懸賞金がどちらに当たるかを示したものではない。
分かれ目は「仕事の対価かどうか」
一時所得になるには、営利目的で継続的に行う活動から生じたものではなく、労働やサービスの対価でもないことが必要だ。懸賞や福引きの賞金が典型で、国税庁は落とし物を拾った人への報労金も一時所得の例に挙げる。人の役に立ってお金を受け取っても、必ず仕事の報酬になるわけではない。
GMOは抽選ではなく、情報の有用性や貢献度などを審査して支払額を決める。ただし、情報の価値を評価して支払われるというだけで、仕事の対価になるわけでもない。
例えば、偶然知った情報を一度だけ提供した一般の人なら、一時所得に該当する可能性がある。一方、サイバー攻撃に関する調査を業務とする専門家が、その仕事の一環で情報提供した場合には、役務の対価として雑所得や事業所得に該当する可能性が高まる。
一般人か専門家かだけで結論は決まらない。情報を得た経緯や提供内容、支払条件などを踏まえた判断が必要だ。
利用者が受け取るお金はどうなるのか
GMOはサービス利用者に一律5000円の見舞金を支払うほか、不正取引による実現損失(取引の差損や手数料など)を補償するとしている。
個人が受け取る社会通念上相当な見舞金は原則非課税だ。今回の5000円も、迷惑や不安に対する見舞金という支払目的から、非課税と考えられる。仮に一時所得に該当しても、ほかに一時所得がなければ50万円の特別控除内に収まり、課税されない。
注意したいのはFX損失の補償だ。第三者が勝手に行った取引で100万円の損失が生じ、後に100万円が補償されたとする。経済的には損失が回復したことになるが、税務上はどう扱われるのか。
不正取引による損失を本人のFX損失として扱えるのか、補償金が非課税となるのかは、取引の実態や補償内容によって異なる。損失だけを他のFX利益と相殺できるとは限らず、補償金との関係も含めて確認が必要だ。確定申告の前に、税務署や税理士に相談したい。
「いくら」より「なぜ」
1億5000万円という金額は、誰もが目を奪われる大金だ。だが、実際に手元に残る金額は、税務上の扱いによって数千万円も変わり得る。
税金の世界では、「いくら受け取るか」と同じくらい、「なぜ受け取るのか」が重要なのである。
文/亀田敬亨 内外タイムス






