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サンゴの枝の間に身を寄せるルリスズメダイの幼魚 =資料提供OIST(エマ・ガイリン)

都市沿岸の魚に「ジャンクフード効果」 見た目は健康、実は強ストレス OIST研究チーム解明

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)などの国際研究チームは6日、沖縄の都市沿岸に生息する魚が人間活動の影響を受け、見た目は健康でありながら体内で強い生理的ストレスを抱えている「ジャンクフード効果」を確認したと発表した。ゲノム(全遺伝情報)解析により、都市化が進んだ地域の魚では、幼魚の全身で425個、成魚の肝臓で585個の遺伝子において炎症反応や免疫応答に関わる活動が高まっていることを特定。水質や個体数測定といった従来の環境調査では捉えきれなかった潜在的影響を明らかにする成果となった。研究論文は英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。

沖縄県名護市の自然海岸である嘉陽ビーチで調査を行うOIST研究者=資料提供OIST

 同研究はOISTの元博士課程学生でリサーチ・フェローのエマ・ガイリンさんを筆頭著者、海洋生態進化発生生物学ユニットを率いるヴァンサン・ロデ教授を責任著者とし、フランス国立科学研究センター(CNRS)やインディアナ大学医学部との共同で実施された。
 研究チームは、熱帯魚ルリスズメダイを対象に、本島北部の自然海岸から高度に都市化された南部まで18地点で採集調査を実施。健康状態を正確に把握するため、ゲノム全体の遺伝子発現パターンを網羅的に解析したという。
 その結果、これまで汚染指標とされてきた多くの遺伝子は水温や栄養状態に左右される一方、水温等の要因を除外しても都市化の度合いに連動して発現が変化する遺伝子(幼魚で425個、成魚の肝臓で585個)が存在することが判明。これらには免疫応答や炎症反応を引き起こす遺伝子が含まれており、都市沿岸の魚で顕著な活動の上昇が認められた。
 さらに野外の魚と、実験室でさまざまな給餌条件のもと飼育した魚を比較したところ、都市沿岸の成魚は「十分な餌を与えられた実験室飼育魚」と似た遺伝子発現を示しつつも、同時に強い免疫・炎症反応を示していたという。
 都市部は人間活動由来の有機物が豊富で餌を得やすい反面、環境汚染などの身体的負担が大きく、栄養充足とストレス抑制が両立していない実態が示された。
 ロデ教授はこの現象について「10代の若者がファストフード店に通うようなもの。安価で食べたい物が豊富にあるが健康には良くない。幼魚にとっても都市沿岸は『餌の豊富さ』と引き換えに『生理的負担』を抱えるトレードオフの関係にあり、これがジャンクフード効果だ」と説明している。
 今回の手法は、動物自身を「生きたセンサー」として利用し、潜在的な環境負荷を捉えるモニタリングアプローチとなる。ロデ教授は「魚やサンゴ礁に限らず、原則としてあらゆる生態系の動物に応用可能だ」と述べている。

沖縄のサンゴ礁に生息するルリスズメダイの成魚4匹(雄3匹、雌1匹)=資料提供OIST