なぜ北朝鮮は核を持つのか ミサイルとセットで強化する「抑止力」の意味
北朝鮮の核・ミサイル開発を理解するには、まず「なぜ北朝鮮は核兵器を必要とするのか」という点から考える必要がある。
最大の理由として考えられるのが、米国や韓国からの軍事的圧力を抑え、国家体制の存続を図るための抑止力を確保することである。
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北朝鮮と韓国、米国の間には、通常戦力の面で大きな差がある。韓国には米軍が駐留し、米韓両国は航空機、艦艇、ミサイルなど高度な通常戦力を保有している。北朝鮮が通常兵器だけで米韓両国と対抗することは不可能である。そこで北朝鮮が重視してきたのが、相手に「北朝鮮を攻撃すれば、極めて大きな損害を受ける」と認識させる核兵器である。
これが核抑止の基本的な考え方である。核兵器は、必ずしも実際に使用することだけを目的とするものではない。相手が軍事攻撃を検討した際、核による報復を恐れて攻撃を思いとどまる状況をつくることに意味がある。
北朝鮮は2022年に核戦力の使用条件などを定めた法律を採択し、2023年には核戦力の強化を国家の基本政策として憲法に反映させた。米国の議会調査局も、北朝鮮指導部が核兵器を体制の安全を保障する手段として位置付けていると分析している。
しかし、核兵器を保有しているだけでは、十分な抑止力にはならない。核弾頭を相手の領域まで運ぶ手段が必要だからである。そこで重要になるのがミサイルである。
核だけでは届かない 「運ぶ手段」としてのミサイル
北朝鮮が弾道ミサイルの開発を続けている背景には、核兵器を実際に目標へ届ける能力を確保する狙いがある。ミサイルには短距離、中距離、長距離などさまざまな種類があり、それぞれ役割が異なる。短距離ミサイルは韓国や日本など周辺地域を射程に収める一方、大陸間弾道ミサイル(ICBM)は米国本土を射程に収めることを目指す。つまり、ミサイルの射程を広げることは、北朝鮮が抑止の対象とする範囲を広げることにつながる。
さらに重要なのが、生き残る力である。核兵器やミサイルが発射前にすべて破壊されれば、抑止力は失われる。そのため北朝鮮は、移動式発射台や固体燃料ミサイルなど、相手が発射地点を特定し、事前に破壊することを難しくする能力の開発も進めている。北朝鮮はミサイル防衛を回避し、精密攻撃能力や戦力の生存性を高める方向でミサイル開発を進めている。
ここから分かるのは、北朝鮮にとって核兵器とミサイルは別々の問題ではないということである。核兵器が「相手に甚大な損害を与える能力」だとすれば、ミサイルは「その能力を相手に届ける手段」である。そして、移動式発射台や複数のミサイル体系などは、その核戦力を対立する相手による攻撃から守るための手段となる。核、ミサイル、生存性を組み合わせることで、北朝鮮は抑止力の信頼性を高めようとしている。
一方、北朝鮮の核・ミサイル開発は、周辺国にとって重大な安全保障上の問題でもある。核戦力の増強やミサイルの多様化が進めば、米国や韓国、日本にとって警戒すべき対象が増える。また、核兵器をめぐる危機では、相手の意図を誤認したり、通常戦力による衝突が核使用へと拡大したりする危険性もある。北朝鮮が核兵器を「戦争を防ぐための抑止力」と位置付けていても、周辺国から見れば、その能力自体が重大な脅威となるのである。
したがって、北朝鮮の核・ミサイル問題を「北朝鮮が核戦争をしたいから」という単純な構図だけで理解することはできない。北朝鮮側から見れば、核兵器は米韓からの軍事的圧力を抑え、国家体制を維持するための最終的な安全保障手段である。一方、周辺国から見れば、その能力の拡大そのものが安全保障上の脅威となる。この抑止のための核が相手には脅威と映る構図こそが、北朝鮮の核・ミサイル問題を長期化させている重要な要因なのである。
文/和田大樹 内外タイムス






