タイ人少女が日本で性的サービス、現地でも大きく報道された人身売買の実情とは…かつてはブローカーも存在
15日、タイ人少女(12歳)に東京都文京区のマッサージ店で性的サービスをさせた元経営者・細野正之被告(52歳)に、東京地裁が児童福祉法違反などで拘禁刑5年・罰金100万円(求刑6年・罰金200万円)の実刑判決を言い渡した。同事件はタイ国内でも報道されており、タイでは人身売買問題の議論が強まっている。
タイ式マッサージ店で12歳少女を働かせた経営者が「だまされた」と主張する驚きの背景【裁判傍聴記】
事件は2025年11月に発覚した。少女は同年6月下旬に母親と日本に入国し、母親から店で働くように指示される。母親は2週間後の7月、少女を残してタイに帰国。少女は1カ月で60人以上の客を取らされた。
売上金は母親が関係する口座へ送金されており、少女が東京出入国在留管理局に「タイに帰りたい」と訴えたことで事件が発覚した。
母親は少女に20歳と偽るよう指示して働かせていた。細野被告はパスポートなどで少女の年齢確認を怠っていたとされる。母親は2025年11月、この事件発覚直前、台湾で別の違法行為で拘束されており、その後タイに送還。タイでは特別捜査局が中心に捜査を開始し、国際人身売買事件という扱いになった。
そのため、母親は人身取引などの罪に問われ、バンコクの刑事裁判所は今年6月、禁錮7年6月の実刑判決を言い渡した。判決当初は禁錮15年だったが、母親が容疑を認め自白したため、7年6月で確定している。
18歳未満の出国には両親の同意と出生証明書必要に
タイでも事件発覚時、大手メディアが連日報道。タイでは実母が連れ出していたことへのショックのほか、大規模な人身売買組織が関係しているのではないかという論調で議論・批判があった。
タイでは昔から国内外での人身売買が問題視され、特にタイ国内の未成年者の誘拐や失踪がこういった人身売買組織に関係しているという疑いの声もある。パンデミック以降はタイやカンボジアを中心に中国犯罪組織によるトクリュウが横行し、成人の誘拐・拉致、人身売買も増加しているとされる。
今年8月からタイでは18歳未満のタイ人の出国には両親または父親、母親(以下、両親)の同意のほか、出国審査時に出生証明書を提示するルールもできた。
タイは収入層の格差が大きく、特に北部や東北部の農村、山岳民の収入がかなり低く、学校に通わせることもできない世帯が昔から多い。そのため、2010年代前半まで、そういった低所得者層の子どもを引き取り、就職先をあっせんするブローカーが存在していた。
ブローカーはまとまった金額を両親に渡し、その金額を子どもが借金として背負って働く。少女の場合、多くが性風俗産業に強制的に従事させられた。
2000年代以前は未成年者の人身売買が多かったが、国際的に問題視されて表向きには減っていた。その後は法的に問題のない18歳以上がブローカーのターゲットとなり、たとえばタイ北部の山岳民族出身女性の場合、両親と当人が合意の上で金額と働き口が決まり、借金を返しつつ、わずかながらでも女性に給与が支払われる契約になっていた。
「東京の事件の少女は初めての被害者ではない」
また、海外で強制的に売春をさせられるケースも以前は多数あった。マレーシアや中国などのタイ料理店、タイ古式マッサージ店、カラオケ店に働き口があるとタイ人女性を集め、現地で強制的に性的サービスをさせる。
2010年前後からスマートフォンの普及でネットが発達してきたこともあり、だまされるケースは減ったものの、逆に自ら韓国やシンガポール、台湾などに出向いて性風俗産業に従事する女性が増え、これらの国ではタイ人女性の入国が厳しくなった時期もあった。
社会的に幼児や未成年の性的搾取がタイでも厳しくなり、スマホの普及でSNSも発達し、それがタイ人自身の監視の目になってはいたものの、今回の事件では実母が連れ出しており、タイ社会のショックは大きかった。
他方で、低所得者層の実子の人身売買が再び増えているとも考えられ、特別捜査局(DSI)は「東京の事件の少女は初めての被害者ではない」とし、いまだ発覚していない国際人身売買があるとタイのメディアに向けて示唆している。
今回の事件についての一般的なタイ人の声は、国際人身売買組織の取り締まりが後手になっているというタイ警察への批判が強く、日本批判はあまりない。現時点では日本バッシングなどは起こっておらず、日本人のタイ観光などに悪影響はない。
文/髙田胤臣 内外タイムス






