韓国競馬の今(後編)日本馬には勝てない韓国競馬、それでも迎える変革の時 日韓交流への“次なる一手”
6日、韓国・ソウル競馬場で行われた国際競走「第9回コリアカップデー」は今年も日本馬の圧勝に終わったが、場内には「ウマ娘」の影響を受けた若者たちによる新たな競馬文化も生まれつつあった。そんな中、韓国競馬はいま、大きな曲がり角を迎えようとしている。ソウル競馬場の移転問題や永川競馬場の新設。もうひとつの側面を取材した。
韓国競馬の今(前編)「韓国にもオグリキャップが現れてほしい」 日本競馬に憧れる若者たち、ウマ娘がつないだ競馬文化
ひと昔前の熱気と、馬券発売をめぐる制度の壁
今年の「コリアカップデー」では「ウマ娘」のコスチューム姿をした若者が目立ち、肩車をした親子も見かけた。もっとも、場内全体をじっくりと見渡せば、まだまだギャンブル色が色濃く残っており、私のような「馬券オヤジ」が幅をきかせていたのも事実だ。
今回、サンデーファンデーで韓国競馬に初参戦した東田明士調教師も「少し前の日本のようなイメージ。おじさんたちの熱気がすごいですね」とその雰囲気を評していた。
とはいえ、国内の馬券の売り上げは意外なことに下降、停滞しているとのこと。そうなると、今回も韓国勢がなすすべなく敗れたことで、またぞろ、国際競走不要論が飛び出しかねない。

そんなネガティブさを打ち消し、いまある熱気を総合的なエネルギーに変えるひとつの試みとして期待されているのが、コリアカップなどの馬券を日本で発売することだという。
JRA(日本中央競馬会)は近年、海外競馬の馬券発売レースを増やしているものの、韓国競馬の発売は対象外。様々なルールがあるのは確かだし、馬券的な興味という点で物足りない面もあるだろうが、不毛な日韓問題やコロナ禍などを経て、それでもなんとか過去9回、積み重ねてきた実績もある。特例として、そろそろ解禁してもいいころではないか。今回、遠征した矢作芳人調教師や藤原英昭調教師からも「馬券を売ったらいいのにねえ」という率直な声が上がっていた。
確かに、日本でコリアカップデーの馬券が広く発売されれば、双方に大きなメリットが生まれるだろう。馬券の売り上げを文化的な事業に投入することもでき、近年では凱旋門賞やブリーダーズカップの主催者もプロモーション戦略を重視するようになっている。多くのホースマンやファンが相互馬券発売を口にするのも自然な流れと言える。
移転計画の報道と、これからの日韓交流
そんな中、韓国競馬は今、大きな変革期を迎えている。今年で移転開業して37年になるソウル競馬場は「レッツランパークソウル」として定着している。しかし、韓国国内でも広く報道されている通り、政府によるソウル首都圏の住宅不足解消計画により、競馬場敷地を約1万戸規模の巨大な住宅地(ミニ新都市)へと開発し、同じ京畿道内の別の地域へ一括移転する方針が示されている。
個人的にはソウル市内からのアクセスも良く、地下鉄を降りてからもスムーズ。あまり大きな声では言えないが、馬券の相性も良かった。それだけに、移転話はあまりにも突飛な話に思えたが、それほどソウルへの一極集中は進み、住宅事情は深刻さを増しているということなのだろう。
周辺住民からは宅地化による交通渋滞や住宅価格が低下する恐れがあることなどから、拙速な移転を懸念する声も根強い。しかし、ソウル一極集中を緩和する政策から移転は確実視されており、同じ京畿道内の複数の自治体が新たな競馬場の誘致合戦に名乗りを上げるなど、すでに未来に向けた議論が活発に行われている。

また、今週末に韓国4番目の競馬場としていよいよ開場を迎える「永川(ヨンチョン)競馬場」も大きな話題だ。こちらは大邱に近い慶尚北道永川市にあり、韓屋を模した観覧スタンドや走路の中央に水辺公園を造成するなどファミリー向けの雰囲気になっているのが特徴だ。
レースは釜山競馬場からの「輸送競馬」という形態になり、人馬の移動が地方の活性化につながるという期待の一方で、長距離輸送による馬への負担やコスト増といった懸念があり、功罪両面の話が直前まで飛び交っている。KRA(韓国馬事会)のある幹部は「これからの韓国競馬の未来を左右する局面。間違いは許されない」と話すが、さてどう進捗していくのだろうか。
馬のレベルはすぐには上がらないかもしれない。しかし、施設を整えるのは重要だ。何より馬券の売り上げが伸びれば、国際競走を含めたレースの賞金もアップでき、出走馬の質が上がっていくのは必然だろう。
振り返ると日本競馬も時間をかけ、オグリキャップやトウカイテイオー、ディープインパクトなどの活躍を経て、ようやく国際レベルの域に到達した。その意味で韓国競馬は今後も生産、育成など総合的に強化していく必要がある。

もちろん、それは競馬文化にも言えること。その意味で今回、ソウル競馬場で見た「ウマ娘」世代の若者たちの情熱は本物と感じた。
「これからも今までのように、ウマ娘が大好きなみんなと楽しく、幸せに過ごしていけるように頑張りたいです」と「アニマルフレンズ」代表のヒカさんは話す。
少子化の時代。この文化交流のうねりを一過性のものにせず、競馬の底力を不動のものとするためにも将来的には香港を含めた東アジア競馬ファミリーの一員として相互の馬券発売の実現や生産、育成の交流へと結びつけていくことが期待される。
文/山本智行 内外タイムス編集部






