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ICCとはどのような国際機関なのか、トランプ政権が赤根智子所長へ制裁発動

国際刑事裁判所(ICC)のトップを務める赤根智子所長に対し、米国のトランプ政権が制裁を発動したというニュースは、日本国内でも大きく報道された。

米国内にある資産の凍結や金融取引の制限、米国への入国禁止といった強力な措置であり、国際司法機関の現職トップが米国政府による制裁対象となる異例の事態である。

ICC赤根所長、「『法の支配』の終焉の始まりとさせない」 米制裁受けコメント

ICCはオランダ・ハーグに本部を置く常設の国際裁判所である。第二次世界大戦後のニュルンベルク裁判や東京裁判のような特別法廷とは異なり、特定の戦争や事件のために一時的に設置されたものではない。1998年に採択されたローマ規程に基づき設立され、2002年から活動を開始した。個人を対象として、国際社会全体が重大犯罪とみなす行為について刑事責任を追及することを目的としている。

逮捕状を発行しても容疑者の拘束には各国政府の協力必要

ICCが扱うことのできる犯罪は、原則として四つに限定されている。ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪、そして侵略犯罪である。重要なのは、ICCが国家そのものを裁く裁判所ではないという点である。

例えば国家間の領土紛争などを扱う国際司法裁判所(ICJ)とは異なり、ICCは犯罪に関与したとされる個人の刑事責任を追及する。そのため、大統領や首相、軍司令官などであっても、条件が整えば捜査や逮捕状の対象となり得る。

もっとも、ICCは世界のすべての国に対して自由に権限を行使できるわけではない。基本的にはローマ規程に加盟している国に関係する犯罪が対象となり、加盟国自身が十分に捜査や裁判を行えない場合にICCが補完的に介入する仕組みである。

また、国連安全保障理事会から付託された事件などについては、非加盟国に関係する問題でも管轄権が及ぶ場合がある。しかし、ICCには独自の警察組織や軍事力が存在せず、逮捕状を発行しても、実際の容疑者の拘束には各国政府の協力が必要となる。この点に、ICCの権限と限界が同時に表れている。

ICCの司法活動と米国の利益が衝突

日本はICCにとって極めて重要な加盟国の一つである。日本はローマ規程を批准し、裁判所の活動を財政面でも支えてきた。こうした背景の中で、日本人として初めてICC裁判所長に就任したのが赤根氏である。

同氏は長年にわたり検察官として刑事司法の分野で経験を積み、その後、国際刑事司法の舞台で活動してきた。ICCの裁判官は締約国による選挙で選ばれ、その裁判官の中から裁判所長が選出されるため、日本政府が一方的に任命できる役職ではない。赤根氏の就任は、日本の国際司法分野における長年の関与と、本人の専門的な経験が国際的に評価された結果と見ることができる。

今回、米国がICC関係者に制裁を科した背景には、ICCと米国の間に存在してきた根本的な立場の違いがある。ICCは中東情勢をめぐってイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を発行したほか、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐってプーチン大統領にも逮捕状を出している。

米国はICCに加盟しておらず、自国民や同盟国の指導者がICCによる捜査や訴追の対象となることに強く反発してきた。今回の制裁は、ICCの司法活動と米国が重視する国家主権や安全保障上の利益が正面から衝突した結果といえる。

“板挟み”の日本は難しい外交判断

こうした状況の中、日本政府が米国に対してどこまで強い姿勢を示せるのかは容易な問題ではない。日本はICCを支持する一方で、安全保障面では日米同盟を外交・防衛政策の基軸としている。

中国、北朝鮮、ロシアを含む厳しい安全保障環境の中、日本にとって米国との協力関係は極めて重要である。そのため、日本政府はICCの独立性や国際法の重要性を支持しながらも、米国との全面的な対立を避けるという難しい外交判断を迫られている。

今回の問題は、単に日本人の国際機関トップが制裁を受けたという出来事にとどまらない。国際社会が掲げる法の支配と、大国が重視する主権や安全保障上の利益が衝突した象徴的な事例である。

ICCは国際社会における重大犯罪の責任を個人に問うために設立されたが、その権威を維持するためには加盟国を中心とする国際社会の協力が不可欠である。赤根氏への制裁をめぐる問題は、国際司法の理想と国際政治の現実の間に、今なお大きな隔たりが存在していることを示しているのである。

文/和田大樹 内外タイムス

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