愛着持っても身近な人がなるのは反対…自衛隊の災害派遣活動から透けて見える厳しい現実
8月23日の日曜日、関東圏に在住の方なら夜中に鳴った携帯電話のけたたましいサイレンで飛び起きたのではないだろうか。
茨城県南部を震源とする最大震度5弱の地震は、多くの人が寝静まる真夜中に直撃したことで、日ごろから意識すべき「災害への備え」を改めて痛感させるものとなった。
目下、関東では被害はそこまで深刻ではなかったが、7月28日に九州の熊本地方を震源とする最大震度7の「令和8年熊本地震」では、熊本県の発表によると27日8時現在、死者が38人、重傷者を含む負傷者が364人に上った。さらに住宅被害は41,939棟で、避難者数2,488人が今現在、自家用車での車中泊や地域に開設された避難所で生活する状況だ。
多くの人は自衛隊は自然災害が起きれば直ちに出動し、態勢を整え、災害派遣活動に当たると思っているかもしれないが、実は違う。よくニュースの一報で、「〇〇知事が自衛隊に災害派遣を要請」というのを見たり聞いたりする人は多いと思うが、基本的には「都道府県知事や市区町村等の要請に基づき、防衛大臣またはその指定する者の命令により派遣される」と陸上自衛隊のホームページに明確な記載がある。実際に地震発生から約1時間後には、熊本県の木村敬(たかし)知事が地域を管轄する北熊本駐屯地の陸上自衛隊第8師団長に災害派遣の要請を行っている。
それ以降、自衛隊は現在に至るまで総力を挙げて活動している。地震発災後、まずは人命救助に最優先で取り掛かり、その後は被災者の生活支援へと活動を移している。統合幕僚監部の発表によると、26日時点で自衛隊員約5100人態勢が給水の支援や入浴設備の準備などをして被災者に寄り添い続けている。
自衛隊賛美の声は高まるものの…
自衛隊員の献身的な姿は各メディアやSNSなどで大量に拡散され、「自衛隊ありがとう」などの感謝の言葉から「自衛隊最高」などと持ち上げる世論も形成される。これに拍車を掛けるのが現在の小泉進次郎防衛相をトップとする防衛省・自衛隊の活発な広報戦略だ。もともと小泉氏自身がSNS発信に活発なのはもちろん、最近では防衛省の報道官や制服組のトップまでもが個人名義の公式X(旧Twitter)を立ち上げ、自衛隊の災害派遣活動から日本周辺海域における中国とロシアの動向などを発信し、多くの人から支持を得ていることが見て取れる。
内閣府が3月19日、ホームページ上に掲載した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」(令和7年11月調査)では、「自衛隊に良い印象を持っている」と答えた人が全体の93.5パーセントと過去最高を記録したことを示した。また、自衛隊に期待する役割については全体の88.3パーセントが「災害の時の救援活動や緊急の患者輸送など災害派遣」を挙げたという。
一方で、「身近な人が自衛官になることの賛否」をめぐっては、賛成が前回調査(令和4年11月は68.6パーセント)時からほぼ横ばいの68.5パーセントだったとし、反対と答えた人のうち、特に30代が33.0パーセントと他の世代と比べて高い傾向にあることも示された。
国民の自衛隊に対する愛着はますます高まってはいるが、身近な人が自衛官になることには及び腰といういびつな世論は、この国の生々しい現実を突きつける結果ともなった。先に挙げた防衛省の広報力強化に向けた取り組みは、もはや「自衛隊に対する好印象」の社会的醸成ではなく、次のフェーズに入っているともいえる。
文/寉見陽平 内外タイムス編集部






