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中国の中産階級破産7点セット(第4回)貯蓄はあるが知識はない者が狙われる起業詐欺

今回のシリーズでは中国の流行語である「中産階級破産7点セット(中産破産七件套)」を基に、中国の中産階級が破産に至る7つのリスクを解説している。

前回の記事では子どもへの教育投資が高額となる背景と、不動産バブル崩壊との関連性を解説した。第4回目となる今回は「無謀な起業」について解説する。

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破滅への焦燥感がもたらす起業

なぜ、中国の中産階級は起業に向かうのか。その理由は彼らが抱く焦燥感だ。

不動産バブル崩壊と、その後の深刻な景気低迷によって中国の中産階級は「上がることは難しくても、落ちるのは簡単」という不安にさらされている。住宅ローンや教育費が家計を圧迫し、わずかな収入減少や失業によって転落する恐怖がある。

また、中国では「35歳限界説」という言葉がはやるほど、一定の年齢を超えた中間管理職がリストラの対象になりやすい。かつては年功序列的な職の安定が期待できたが、今やインターネット業界や金融業界では、コスト削減のために高給取りの中間管理職が真っ先に切られる。

この「落ちたくない」という焦燥感が、「今のうちに何か手を打たなければ」という行為を生み出す。安定した職を辞めて起業する、それは現状打破であり、同時に最後の賭けでもある。

彼らが起業に向かうのには歴史的な背景がある。中国の過去40年は「新しい市場にいち早く飛び込んだ者がばく大な富を築く」という成功物語が何度も繰り返されてきた。

1980年代には「下海」という、官職を辞め民間での起業に挑戦することが流行した。1990年代には不動産投資、2000年代にはインターネットビジネス。現在の中流層の多くは、この神話を間近で目撃し、あるいはその恩恵を受けて成長した。

しかし彼らは気づいていない。当時の成功神話はもう終わり、今は過剰供給・過当競争の時代だということを。過去の成功体験が、現在の市場環境への誤った楽観を生み出しているのだ。

ここに衝撃的な統計データがある。中国中小企業協会によると国内新規登録企業の3年生存率は20%未満だ。

中国の経済が高度成長期から低成長期へ移行した今、誰かが商品を売れば市場が買ってくれる時代は終わった。ゼロサムゲームの激しい競争のなか、新規参入企業が生き残る土壌は急速に失われている。

中産階級を狙う起業詐欺の悪質な手口

起業のリスクとなるのは苛烈な競争だけではない。中国では中産階級を狙った起業詐欺が組織化しており、特にフランチャイズを装った組織的詐欺が社会問題となっている。

中国の「快招公司」とはフランチャイズの加盟店募集を高速で行う業者のことを指すが、なかには「短期間でブランドを作り」「短期間で大量の加盟者を集め」「短期間で資金を回収して消える」ことをビジネスモデルとする詐欺組織も含まれている。この場合は正式なフランチャイズと異なり、加盟者が成功することを最初から意図していないのが特徴である。

詐欺の手口は有名フランチャイズのすり替えから行われる。加盟希望者が有名フランチャイズを検索エンジンで検索すると、広告で買われた偽の公式サイトが上位に表示される。そして偽の公式は「有名フランチャイズは加盟枠が埋まった」と告げ、代わりに「同じフランチャイズの新ブランド」を推薦する。

その後、加盟希望者に見せる店舗は完全に演出だ。日雇いのサクラに行列させたり、大規模な割引クーポンを発行したりして一時的に客を集める。そして加盟希望者は「繁盛している店舗を見た」と信じ込み、契約に至る。

その後、加盟金や材料費を回収した快招公司はサポートを一切行わず、オフィスを引き払って行方をくらます。当然ながら支援を打ち切られた加盟店は赤字や閉店に追い込まれる。そして快招公司は追及を逃れるため、6〜9カ月ごとにオフィスの移転やペーパーカンパニーの登記を繰り返し、新しいフランチャイズで新たな被害者を集めるのだ。

現地メディアである新京報によると、2024年に上海警察が摘発した事例では、被害額は1億元(約24億円)以上にのぼり、34人の容疑者が摘発された。

中産階級の中には、企業や専門職でキャリアを積み、一定の成功を収めてきた人も多い。だからこそ、「会社で成果を出せた自分なら、商売を始めても成功できる」という心理に陥ることがある。

そして、こういった中産階級の無謀な起業は、詐欺師にとっては「貯蓄があり、焦りがあり、商売の知識がない」という最高の獲物だ。そして彼らは、まさにその焦燥を利用して組織的に搾取する。

この構造を理解せずに起業に飛び込めば、市場のリスクだけでなく、起業を支援するふりをした捕食者に食い物にされる危険が極めて高い。これが中国における「無謀な起業」が破産に陥るまでの過程だ。

文/下川英馬 内外タイムス

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