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航続距離と機能性に優れた軽EV市場の黒船「BYD RACCO」を侮るべきではない深刻な理由

中国BYDの新型EV「BYD RACCO(ラッコ)」が、28日に日本国内でデビューした。EV補助金を加味した実質価格は廉価グレードで199万円。ホンダ「N-ONE e:」の補助金適用後のエントリーグレードの価格よりも安く販売されたことになる。

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「ラッコ」の最大のポイントは機能性の高さと航続距離の長さだ。全グレードで両側電動スライドドアを採用。室内空間が広く、日本特有の狭い駐車場でも乗り降りしやすい。

バッテリーはリン酸鉄リチウムイオンで、耐久性や熱安定性に優れているのが特徴だ。

「ラッコ」の最上位グレードの航続距離は320キロ。同じく最上位グレードで比較をすると、日産「サクラ」が180キロ、「N-ONE e:」は295キロである。補助金適用後の価格は「ラッコ」が234万円、「サクラ」が241万円、「N-ONE e:」が261万円。同グレードで比較した場合「ラッコ」の価格優位性が際立つ。

車のサブスクサービスを提供するKINTOは、「電気自動車(BEV)への関心度調査2025」を実施している。「電気自動車(BEV)を選ばない理由があれば教えてください(複数回答)」との質問で、「車両価格が高額」との回答は50.7%、「フル充電で走れる距離が短いから」が41.7%と、他の回答に比べて割合が高い。

「ラッコ」はライバル車に対して、相対的な優位性を打ち出した。日本の消費者に真摯(しんし)に向き合っているように見えるのだ。

日本車の「牙城」インドネシアで存在感

SNS上では中国製の自動車に補助金を出すことに、違和感を覚えるなどといった投稿が見受けられる。しかし、自国優先主義は国際的な信頼を失いかねない考え方だ。

「ラッコ」の補助金は15万円で、「サクラ」「N-ONE e:」は58万円が適用されている。BYDはすでに不利な状況に置かれているのだ。それにもかかわらず、差別化ポイントが豊富な軽自動車を出してきたBYDの姿勢には驚かされるばかりだ。

しかし、なぜEVを得意とする巨大メーカーが、日本の軽自動車市場などという世界的に見てニッチな領域に攻め込んだのか。海外のメーカーはこれまで、この特殊な領域に参入してこなかったのだ。

BYDは世界中のあらゆる市場に最適化した自動車開発に注力している可能性が高そうだ。

この会社はもともと携帯電話向けのバッテリーを製造していた。バッテリー技術を基盤に自動車事業へ参入したのだ。中国政府の補助金制度でEVが普及したこともあり、BYDは巨大企業に成長した。EV需要が一巡すると、ガソリンと電気を併用するPHEVの販売にも力を入れるようになった。消費動向や需要を見極めて小回りの利く商品戦略を展開するのが巧みな会社なのだ。

しかし、足元の業績は停滞気味だ。2026年1月~3月の純利益は前年同期比で5割超減少している。2025年度はおよそ2割の減益だった。

中国景気の冷え込みや自動車需要の一服により、販売台数が伸び悩んでいる。生産能力を維持・拡大するためには世界に進出してシェアを獲得する必要がある。BYDの最大の武器は開発スピードの速さだ。それを生かして、世界中のあらゆるマーケットに最適化しようとしているように見える。日本の軽自動車もその一環というわけだ。

BYDは2024年に日本が高いシェアを占めるインドネシア市場に進出。低価格EVで新車販売シェアは5%で、5位を獲得した。東南アジアの一部市場で日本車の牙城を崩しつつある。

中国製品を甘く見るのは禁物だ。日本メーカーの品質に海外勢が及ばないと考えられていた家電において、いつの間にか差をつけられたことは記憶に新しい。同じ轍(てつ)を踏まないためにも、競争相手の実力を正確に読み取る必要がある。

文/不破聡 内外タイムス

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