父親から性的虐待を受けていた50代女性が涙の訴え、時効の壁が争点も「やっとここまで来ました」
子どもの頃に受けた性被害でPTSDを負ったなどとして、50代の女性が実父を訴えた。29日の東京地方裁判所では、傍聴券を求める抽選のために多くの人が並んでいた。
子ども時代の虐待を訴えるのは時効の壁があり、なかなか難しいとされている。第1回口頭弁論後、女性は涙を流し、これまで支えてくれた家族や支援者に感謝していた。
「(実父から被害を受けた)私たちきょうだい3人の尊厳を取り戻すことが一つの目的です。もう一つは、性的虐待・性被害のサバイバーの方たちや、いま被害に遭っている子どもたちに『自分は被害者なんだ』と気づいてもらうこと、そして、『闘っていい』と伝えるために裁判をすることにしました」
記者会見でそう話したのは原告の塚原たえさん(54)。一般社団法人PCASA JAPANの代表理事をしている。性的虐待・性犯罪の公訴時効の撤廃と厳罰化を求めているほか、当事者として相談にも乗っている。その経験から出た発言だ。
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「お風呂は恐怖の場所だった」
裁判では何を訴えているのか。塚原さんは幼い頃から、保護されるまで実父(76)から虐待を受けた。身体的虐待としては、体を洗濯ホースやベルトでむち打つようにたたかれた。お風呂で顔を水につけられたり、裸で屋外に出されたりした。
9歳のとき初めて陰部に指や異物を入れられた。11歳のときには性交をさせられるなど、性的虐待も受けた。その結果、複雑性PTSDと診断された。被告の実父側は請求棄却を求める答弁書を出している。詳細な反論はこれからだ。
「同じく被害に遭っていた弟は29歳のときに自殺しました。亡くなる前に自殺未遂をしたとき、母と電話しました。すると、『(弟は)お風呂に入っている』と言っていたのです。マズイと思いました。なぜなら、お風呂は、私たちにとって恐怖の場所だったからです」(塚原さん、以下同じ)
恐怖の場所というのは、どういう意味なのか。
「小学校のとき、水がたまったお風呂の中に、夏冬関係なく、何度も頭をつけられたり、最後は沈められたりしました。『もう、このまま死ねたらいいのに』と思った場所でした。何度も顔をつけられ、呼吸ができなくなって、子どもながらに『このまま死んだら楽になるんだろう』と思った場所です。私は今でも浴槽に一人で浸かることができません。シャワーを浴びることさえ、ドアを開けっぱなしでないと怖い。教科書も浴槽に入れられ、使えなくされました。それにお風呂場は性加害も多い場所です。今でもつらい場所です」
母親は「笑って見ているだけでした」
性的虐待を受けていたとき、母親はどうしていたのか。
「14歳のとき、父と母との性行為中に呼ばれ、裸になるように命令されました。そして『お母さんの上に乗って、おっぱい吸え』と命令され、従わされたのです。また、父が私に挿入したのですが、隣に座っていた母に『ほら見て。入った。入った』と言っていました。母は『何してるの?』と笑って見ているだけでした」
今回の訴訟では、こうした性的虐待が不法行為にあたるかどうかを争う。現在は、刑法で不同意性交等罪や監護者性交等罪があるものの、当時は強姦罪だった。性交時に暴行や脅迫が伴わないと罪に問えず、かつ親告罪だった。そのため、当時の行為が不法行為にあたるかが争われる。
民法では、不法行為が発生してから20年で時効になる。しかし、加害行為に起因する複雑性PTSDが続いており、その発症を起算点とすると、まだ5年も経っていない。これまでの判例で、20年以上前の性的虐待でも、PTSDの発症が起算点と認められたことがある。時効の壁は大きな争点になっている。
「弁護士さんが見つかるまで本当に長かったんです。本当にやっとここまで来ました」
そう言って、涙ぐんだ。
文/渋井哲也 内外タイムス






