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“鉄砲玉”にされた少年 連続強盗・窃盗事件で実行役を担わされ、主犯格の先輩から顔面殴打20発【裁判傍聴記】

2024年10月から12月にかけて、主に神奈川県内で強盗・窃盗事件が連続発生した。その主犯格のM被告(22)が起訴された事件を、まずは列挙する。

①10月23日早朝 コンビニでタバコ3カートン窃取
②10月26日夜 スポーツ用品店でパーカーなど7点窃取
③11月9日夜 リサイクル店でハンドバッグなど12点窃取
④11月10日夜 リサイクル店でスニーカーなど7点窃取
⑤同日夜(④の約1時間後) リサイクル店でダウンジャケットなど23点窃取
⑥11月12日夜 リサイクル店でパーカー窃取
⑦11月18日未明 コンビニで弁当7点窃取
⑧同日早朝(⑦の約3時間後) 路上で男性(62)をヘルメットで殴り財布を奪う。男性は全治3週間の負傷
⑨同日早朝(⑧の約50分後) 路上で男性(65)をヘルメットで殴り現金やバッグなどを奪う
⑩同日早朝(⑨の約35分後) 路上で男性(53)をヘルメットで殴り現金やカードなどを奪う。男性は全治半年の負傷
⑪同日早朝(⑩の約50分後) 路上で男性(42)をヘルメットで殴り現金を奪う
⑫11月23日夜 質店で指輪2点窃取
⑬11月28日午後 質店でネックレスとブレスレットを窃取
⑭12月5日夜 公園で男性(43)を金属バットで殴る。金品奪取は失敗。男性は全治1週間の負傷
⑮同日夜(⑭の約50分後) 路上で男性(25)を金属バットで殴る。金品奪取は失敗。男性は全治15日の負傷

とにかく、約1カ月半の間に暴れまくった形だ。これらの犯行に主に関わったのはM被告、同学年のT(22、今年3月に懲役11年判決)、そして5歳下のA少年の3人。MとTは当時20歳、Aは15歳だった。

MとTは中学時代からの友人。Aは事件の4カ月ほど前に友人を介して2人と知り合った。「一緒にタバコ吸ったり酒飲んだりバイク乗ったりしていた」(A証言)といい、“不良グループ”の先輩・後輩の関係となった。別の仲間の証言では、Aら後輩にもめ事があると「Mが間に入ってくれていた」という。

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万引きして車かバイクに乗って逃げ現金化

24年秋頃にMとTが暴力団関係者とトラブルになり、200万円の支払いを要求された。これをきっかけに、金集めのため前述の連続強盗・窃盗事件を起こしていく。

一連の事件のうち、①~⑥はいずれも店舗での万引き。実行役を担ったのは全てAだった。MやTが欲しいものをAに指示し、Aは買い物かごに入れて店員の隙を見てかごを持ったまま店外へ逃走。外で待機しているMとTの車かバイクに乗って逃げる―という手口だ。

Aは横浜地裁で開かれたM被告の公判に、被告や傍聴席から姿が見えないよう遮へい措置が取られた中、証人として出廷した。①~⑥の万引きについては仲間内で「カートンダッシュ」「カゴダッシュ」と名付けて、起訴分以前にも同様の行為を行っていたという。

Aは「その場のノリでやっていた」。もちろん違法行為であることは大前提だが、どこか仲間同士ゲーム感覚で楽しんでいるような雰囲気がうかがえる。

盗んだ商品は一部転売して現金化。ただ、Aは「MとTが折半して余った端数だけもらった」程度の“報酬”だけ受け取っていた。

路上強盗で被害者に直接手を出したのはAのみ

11月18日になって、⑦で弁当を盗み腹ごしらえした後の⑧~⑪では単純万引きから路上強盗へと手口が急激に粗暴化。別の不良仲間1人が加わり4人での犯行だが、今回も実行役は全てAが担った。

バイク2台で走りながら、歩いているターゲットを見つけるとAがバイクを降りてターゲットへ向かい、ヘルメットで殴りつけて金品を要求する。

4件のうち前半の2件では、他の3人は現場が見えない場所でAを待っていた。後の2件は他の3人も被害者を取り囲むなどしたが、あくまでも被害者に直接手を出したのはAだけだった。

一連の路上強盗について、Aは「本当はやりたくなかった。リスクがデカ過ぎるのに利益もない。でも、先輩の圧に恐怖があって、『分かりました』と言った」と打ち明ける。

この連続路上強盗の発生は、その日のうちに報道で流れた。得られた現金が思ったほどでもなかったこともあるのか、またも手口を変える。今度は質店での貴金属狙いだ。

⑫はMとAの2人での犯行で、これも実行役はA。Aだけが店に入り、指輪2個を試着して見比べているふりをしながら、店員の隙を見て店外へ逃げた。

実は⑫の後も、質店での貴金属窃盗を数回試みた。だが実行できなかった。Aは明かす。「その時は『もうやりたくない』と思っていたし、『店員さんに捕まるかもしれない。もう無理だ』と思って止めました」。そしてMに「もうやりたくない」と告げた。Aによると、Mは「お前が『やる』と言っただろ」と怒った。

「正座させられて、顔を殴られました」

実は前述の15件以外に、強盗や窃盗と全く毛色の異なる事件でもM被告は起訴されていた。⑫と⑬の間の11月26日に起こした傷害事件。被害者は、Aだ。

不良仲間のたまり場になっていたTの関係先で、「正座させられて、顔を15発とか20発くらい、拳で殴られました」とA。さらにTからも家の外に連れ出され、数発殴られた。

その後、AはMらに連れられて飲食店に行き、牛丼をおごってもらう。Mからすると、後輩を少しシメてやったというくらいの感覚で、それだけ殴ってもまだ自分の手下だと考えていたのだろう。

ちょうどそのタイミングで、Aがしばらく帰宅していないことを心配したAの父からAに電話が入った。Aは顛末を報告。父は急ぎ飲食店に駆け付け、Mと話し合い、Mに1万円を渡してAを引き取って帰った。

「もう、顔も見たくないという気持ちだった」。以降、MやTに会うことはなかった。⑫を最後にAは事件に関わっていない。

なぜ⑫までの全ての事件でAが実行役となったのか。Aは「2人が罪にならないようにするため。オレが捕まっても初犯だから(起訴は)逃れられる。そう、Mから言われました」。既に成人だった2人が、少年のAを“鉄砲玉”のように都合よく使ったということだろうか。

「無理強いはしていない」

先輩2人の言い分は異なる。Mと、証人出廷したTはともに「Aは足が速いから」。さらにMは「Aから『自分にできることがあればやります』と言ってきた」と加えた。Tは「Aは楽しそうに(実行役を)やっていた」と証言した。

Aへの暴行の動機について、Mは「人を小バカにしているような態度だったから」と説明した。質店の窃盗に失敗したことや、Aが「やりたくない」と申し出てきたことは「関係ない。(犯行を)無理強いはしていない」と強調した。

弁護人「Aさんや後輩を、いいように使ってやろうと考えていたのでは」

M被告「それはないです」

どちらの言い分が正しいか、ということを軽々に言うことはできない。ただ、少なくとも先輩が“足抜け”したかつての後輩を冷たく突き放しているような印象は拭えない。

Aは逮捕後4カ月近く勾留され、家庭裁判所での審判を経て保護観察処分となった。

「自分は流されやすいところがある。今後は自分の意思に従って、先輩に何か言われても、ちゃんと断らないといけない」

最後にMに対する今の思いを聞かれると、次のように答えた。

「自分を殴ったことを反省してほしいし、自分が(犯行を)実行しているときに安全なところにいたのは、自分の中で許せない」

M被告に対して横浜地裁はTと同様に懲役11年の判決を言い渡した。裁判長は「後輩で少年であるAを(実行役として)利用した側面は否定できない。Aに対する傷害事案も軽視できない」と指摘した。

文/篠田哉 内外タイムス

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