表示回数ベースは的外れか「Xでバズった」の基準を再考する
X(旧Twitter)において、投稿されたポストが多くの人に見られたという指標の一つとして、「万バズ」という言葉がある。いいねを1万回押されたことを指す指標なのだが、この意味を誤って使用している人がいる。
先月、アイドルグループのファンクラブを抜ける方法に関する質問がタイムライン上に流れてきたが、投稿者は続けて「質問の投稿が万バズした」という旨の発言を行った。本稿執筆時点では、いいねは300件足らず、リポストは8件しか行われていないが、表示回数は192万件を超えている。表示回数を基準にして「万バズを達成した」と語っていたようだ。
【福田淳の対談闊歩】中川悠介(第2回)1年後にバズった「倍倍FIGHT!」 再度CANDY TUNEのMVを制作
後にこの投稿者は、自身が「万バズ」の基準を間違えたことに気付いたようだが、このような勘違いは「万バズ」という言葉が使われるようになってから時折見かける。フォロワーが数十人しかいない人にとっては、自分の投稿が1万回表示されたというのは驚くべき事案かもしれないが、Xの表示回数はでたらめと言っても差し支えないほど、基準があやふやだ。
表示回数は、タイムラインで表示された回数が基準になっている。これは他者が見た場合に限らず、自分のタイムラインに自分の投稿が表示された時もカウントされる。つまり、自分の投稿が10回目に入れば、表示回数が10回増える。極端な話、鍵アカウントで誰もフォローせずに自身の投稿をひたすら見続ければ、表示回数1万件を達成することだって可能だ。同様に、他者が自身の投稿を何度も見ることでも、表示回数の分だけ増加する。
近年、表示回数を基準にしてバズったとする記事を、ニュースサイトでもよく見かけるようになった。しかし、ヨドバシカメラマルチメディア池袋の開店告知が2000万人に届いたわけでも、「猫画像を送るお母さんのほっこりLINE」が2.6億人に届いたわけでもない。本物の反応を知りたいのであれば、いいねやリポスト、ブックマークなど、実際に人が稼働した痕跡のある動きを最低基準にした方がいいだろう。
「いいね1万件」も、必ずしもバズりの基準にはなりえない。日本語での投稿者に絞ってXで検索をしてみると、タイミングによっては10分ごとに「万バズ」が発生している。現代において1万件のいいねであれば、ちょっと知名度のある人物が何かしらの行動を起こせば、容易に得られるものになっている。
そもそも「バズった」という言葉は、多くの人に広く伝わるという前提があってこそ。では、現代のXにおいて多くの人に伝わる、影響力のある投稿であることを証明するには、どこを基準にすればよいのだろうか。
表示回数「億バズ」が最低基準か
2025年4月、アイドルグループ・SKE48の相川暖花が行った「握手会に来たファン」の投稿は、写真のインパクトも相まって一気に拡散された。その後は日本テレビ、静岡朝日テレビ、スポーツニッポンなどからの取材が相次ぎ、一躍時の人になっただけでなく、大所帯グループのメンバーにとっては念願ともいえる選抜メンバー入りも果たした。
同年10月、希少がんによって亡くなったなかやまさんは、予約投稿機能を活用して「グエー死んだンゴ」との文章を死後に公開。5ちゃんねる用語でユーモアを交えた内容の投稿は、国立がん研究センターなどへの寄付活動にもつながった。この一連の流れは報道ステーションやNHK NEWS、北海道新聞といった硬派な媒体が次々取り上げ、がんに対する啓もう活動につながった。
どちらの投稿も、現在はそれぞれ表示回数が1億回を超えている。大手新聞社やテレビ局による取材がバズの基準になるわけではないが、Web専門のニュースサイトでなく、報道機関が直接関与するニュースサイトなどが取り上げたということは、それだけ多くの人に伝えるべきと判断された証拠にもなりえる。
ダウンタウンの松本人志による「とうとう出たね。。。」が1.3億回、俳優の佐藤二朗による週刊文春批判の投稿が1.6億回以上表示されるなど、必ずしもポジティブなきっかけでないバズりも存在するものの、これらも情報の薄いコタツ記事として消化されるのではなく、投稿をきっかけにした深い議論が巻き起こっている。
いいねを1万件集めることもすごいことであることには間違いない。だが、本来の意味でのバズりを目指すのであれば、カルチャーが生まれる目安の一つになりつつある「表示回数の億バズ」を基準にした方が良いのかもしれない。
文/池田聖人 内外タイムス編集部






