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横浜エース右腕への打球直撃 低反発バット、7イニング制…球児を守る改革は十分か

夏の地方大会の真っただ中、高校野球界をヒヤリとさせる出来事が起きた。

7月9日、横浜のエース・織田翔希投手の左足にピッチャーライナーが直撃。すぐにマウンドを降り、病院へ向かった。チームは湘南工大付にコールド勝ちを収めたものの、プロ注目のドラフト1位候補右腕のアクシデントに、高校野球ファンは騒然となった。

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幸い診断結果は「ヒビ、骨折なし」。最悪の事態は免れたが、このニュースを受けて改めて思い浮かんだのが、2024年から導入された新基準の金属バット、いわゆる「低反発バット」の存在だ。

従来より反発係数を約96.3%に抑えたこのバットは、打球速度を落とし、投手への打球直撃による重大事故を防ぐことを目的に導入された。今回、織田が骨折を免れた背景にも、その効果は少なからずあったかもしれない。

しかし一方で、こんな疑問も残る。本当に、高校球児は助けられているのだろうか。

「投手を守る」はずの改革だったが…

導入のきっかけは2019年夏までさかのぼる。

岡山学芸館・丹羽淳平投手が対戦相手・広島商のバッターからピッチャーライナーを顔面に受け、頬骨を骨折する大けがを負った。また同年には、投手の障害予防に関する有識者会議で、「投低打高」が進みすぎたことによる投手の肩や肘への負担も問題視された。こうした議論を経て、2024年から全国一律でより打球の強さを抑えられる“飛ばないバット”が導入された。

その影響は数字にも表れている。導入後初の全国大会となった2024年春の選抜大会では、本塁打はわずか3本(うち1本はランニング本塁打)。前年の12本から大幅に減少した。その後も2025年春は6本、2026年春は9本。夏の甲子園でも2024年は7本(前年23本)、2025年は10本と、本塁打数は激減した。

選手が新基準に適応し始め、2026年にはDH制も導入されたことから徐々に増加傾向にはあるものの、高校野球は以前とは対照的な「投高打低」の環境へと変化した。

では、それによって投手の負担は本当に軽くなったのだろうか。必ずしも、そうとは言い切れない。

本塁打が出にくくなれば、打者は当然戦い方を変える。カット打法で粘って球数を投げさせ、単打で出塁し、機動力を生かして1点を奪いにくる。得点圏ではさらに粘り強く食らいつき、投手へプレッシャーをかけ続ける。そうしたスモールベースボールが、本当に投手の負担軽減につながっていると言えるのだろうか。

野球は相手がいて成り立つ競技である。相手の特徴や試合展開に応じて最も嫌がる戦い方を選ぶのは、ごく自然なことだ。ボールが飛ばなくなれば、打者は別の形で攻略を試みる。だからこそ、「飛ばなくなった=投手の負担が減った」と単純には言い切れない。

また、ピッチャーマウンドからホームベースまでは、わずか18.44メートルしかない。低反発バットで反発係数を抑えたとはいえ、ピッチャーライナーは初速150キロを超えることもある。硬式球が直撃すれば、当たりどころ一つで大けがにつながりかねない。

織田は幸い骨折を免れた。しかし、もし打球が数センチずれていたら――。そう考えると、ライナー事故のリスクを低反発バットだけで解消することは難しいだろう。

失われつつある高校野球の”華”

低反発バット導入以降、本塁打数が激減したことは前述の通りだ。これは、本塁打という高校野球の醍醐味を楽しみにしているファンにとっても、小さくない変化だろう。

地方球場はまだしも、両翼95メートル、中堅118メートルという広さに加え、浜風の影響も受ける甲子園球場は、もともと本塁打が出にくい球場として知られている。

そんな舞台だからこそ、長い大会の歴史の中では数々の劇的な本塁打が生まれ、多くの名勝負を彩ってきた。一振りで流れを変える一発は、高校野球というコンテンツの魅力を支える大きな要素でもある。

もちろん、「本塁打が多ければ多いほどいい」と言いたいわけではない。息詰まる投手戦や緻密な試合運びを好むファンも少なくない。それでも、野球の華の一つが失われつつあることは否定できないだろう。

低反発バット導入から3年目。選手の安全という目的は尊重されるべきだが、その改革は本当に目的を果たしているのか。ライナー事故の危険性は依然として残り、投手の負担が劇的に減ったとも言い切れない。一方で、本塁打という高校野球の魅力は確かに減少した。

だからこそ、今こそ一度立ち止まり、その効果と課題を検証する時期に来ているのではないだろうか。

「7イニング制」は球児を守る答えになるのか

こうした議論は、現在検討が進む「7イニング制」にも通じる。

2024年8月、高野連は猛暑対策や選手の障害予防、大会運営の効率化を目的に7イニング制の検討を開始した。同年12月には「可及的速やかに採用すべき」との見解を示し、2025年の国民スポーツ大会ではすでに導入。このまま議論が進めば、2028年春の選抜大会から本格採用される可能性が高い。

しかし、現場からは慎重論が根強い。大阪桐蔭の西谷浩一監督は一貫して「断固反対」の姿勢を示し、出場機会の減少や高校野球そのものの価値低下を理由に、検討会議でも反対意見を訴えてきた。SNSでも「試合時間を短くするのではなく、ドーム開催や開催時期の見直しで対応すべきだ」といった声が多く、試合そのものを変えるのではなく、環境改善を求める意見が目立っている。

タイブレーク、球数制限、朝夕2部制、クーリングタイム――。近年の高校野球では、「選手を守る」という理念のもとで数々の改革が進められてきた。

もちろん、その理念に異論はない。ただ、本当に球児のためを思うのであれば、まず耳を傾けるべきは現場の声ではないだろうか。改革を進めること自体が目的ではなく、その改革が本当に選手のためになっているのかを検証し続ける姿勢こそが求められる。

教育の一環として行われる高校野球だからこそ、あるべき姿は「現場ファースト」である。織田の打球直撃は、その当たり前の原点を、改めて思い出させる出来事だった。

文/加藤聡 内外タイムス編集部

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