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「科学を科学する」研究会、神戸大学で開催 AI時代の研究評価や科学政策を議論

研究者のキャリア、論文や引用、研究費、査読、共同研究ネットワークをデータで分析し、科学の仕組みそのものを明らかにしようとする研究会が7月4、5日の2日間、神戸大学で開かれた。国内の研究者や大学・研究機関の実務担当者らが100人以上集まった。

科学はどのように発展するのか。今回で4回目となるScience of Science研究会では、研究評価、研究者キャリア、科学政策、AIと科学研究、オープンサイエンスなどをテーマに発表と議論を行った。

Science of Scienceは、科学そのものを研究対象として扱う分野である。論文数や引用数を数えるだけでなく、研究テーマがどのように生まれ、知識がどのように広がり、どのような制度が研究者の行動を左右するのかをデータ分析やネットワーク解析、計算社会科学の手法で検証する。海外では国際会議ICSSIなどを通じて研究が広がっており、今回の研究会はその日本版に相当する場となった。

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生成AIが変える研究評価

初日の4日には、東京大学の浅谷公威特任准教授によるチュートリアルが行われた。参加者は、無料で利用できる学術データベース「OpenAlex」を使い、論文や著者、引用、研究機関などのデータから、科学研究の姿を読み解く方法を学んだ。

チュートリアルでは、実際に手元のPCで分析コードを動かしながら、引用が一部の論文に集中する様子、研究者のキャリアと成果の関係、研究分野を地図のように可視化する方法などを体験した。研究評価を単なる論文数や引用数だけで見るのではなく、研究の広がりやつながり、革新性を多面的に捉えることが狙いだ。

2日目の招待講演では、米コーネル大学の久壽米木啓悟氏が、大規模言語モデル(LLM)の普及と科学論文の生産との関係を取り上げた。2018年1月から2024年6月までに主要なプレプリントサーバーへ投稿された約210万件の論文を分析し、LLMの利用が論文産出の増加、非英語話者の参入障壁の低下、参照される先行研究の多様化と関連していることを示した。

一方で、生成AIの普及は研究評価にも新たな課題を投げかけている。文章の複雑さや表現の洗練度は、従来、研究の質を測る手がかりと見なされることがあった。しかし、LLMが論文執筆を支援するようになれば、そうした文章上の特徴を研究の価値と結びつけて評価することは難しくなる。AIは研究者の生産性を高めるだけでなく、研究成果をどう評価するかという前提そのものを変えつつある。

指標と政策をどうつなぐか

今回の研究会では、Science of Scienceを学術研究として扱うだけでなく、大学経営や科学技術政策にどう生かすかという視点も目立った。北陸先端科学技術大学院大学の小泉周氏は、定量指標と科学技術政策の関係をテーマに招待講演を行った。

論文数、被引用数、大学ランキング、外部資金獲得額などの定量指標は、研究力や政策効果を把握するために広く使われている。一方で、指標が研究現場をゆがめる、研究の質や多様性を十分に捉えられないといった批判もある。小泉氏の講演では「問題は指標ではない。問いと指標のミスマッチである」と指摘し、目的と指標の対応関係が論点となった。

文部科学省科学技術・学術政策局の近藤潤氏も登壇し、行政官の立場からScience of Scienceを論じた。講演では「科学」は観測可能か、政策介入の影響は予測可能か、という問いが示された。科学技術・イノベーション政策を検討する前提として、科学や研究活動を取り巻く状況をどう認識し、政策課題をどう設定するかが重要になる。

実行委員長を務めた神戸大学の松井暉講師(経済学)は、今回の研究会について次のように話す。

「Science of Scienceは、研究評価や科学政策だけのための分野ではない。研究者がどのように知識を生み出し、どのような環境で挑戦的な研究が生まれるのかを、データに基づいて考えるための共通言語になりつつある。今回の研究会では、AIやオープンサイエンス、研究データ基盤、大学の研究支援など、多様な立場の参加者が議論した。初の関西開催を通じて、国内のScience of Scienceコミュニティーの広がりを感じる機会となった」

研究力を「測る」から「生かす」へ

ライトニングトークや一般講演でも、研究評価、大学教員ポスト、研究者キャリア、研究費情報の分析、OpenAlexとLLMを用いた論文特徴の可視化、AI使用の検出、研究データ基盤、ソーシャルメディア上の学術情報流通など、幅広いテーマが扱われた。政策文書に引用される科学論文の集中、ノーベル賞論文を事例とした知識波及、特許共起ネットワークによる技術評価、論文と特許をつなぐ分析、科研費データを用いた研究生産性の男女差なども報告された。

近年、大学や研究機関では、研究成果をどう評価し、研究者をどう支援するかが重要な課題になっている。論文数や引用数は分かりやすい指標だが、それだけでは研究の独自性、長期的な波及効果、若手研究者の成長、分野横断的な知識の広がりを十分に捉えることはできない。

Science of Scienceは、研究力を単に順位づけるための手法ではない。研究者が挑戦しやすい環境をどう作るか、研究成果を社会や政策にどうつなげるか、大学や研究機関がどのように研究支援を高度化できるかを考えるための基盤でもある。生成AIが研究活動に深く入り込む今、科学を支える仕組みそのものをデータに基づいて検証する重要性は高まっている。

文/吉田光男 内外タイムス

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