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中国の深刻な女性不足が生む結婚詐欺の闇(前編)高額な結納金を山分けして消えた花嫁

以前の記事では「都市に向かう女性、農村に残る男性」という現象を紹介した。下のグラフは都市と町、農村の30歳以上の男女未婚率を示している。

結婚できない中国の若者(第1回)日本より深刻な「未富先老」…国家の存亡にかかわる非婚化問題

下のグラフからは農村では男性の未婚率が女性を大幅に上回っていることが分かる。農村を中心とした地方で深刻な女性不足となっており、今回からは2回に分け、こうした社会的背景から生まれる悪質な婚活仲介業者と結婚詐欺の実態を紹介する。

婚活仲介業者のわな…新婚29日で逃亡

悪質な詐欺事件の舞台となったのは河南省。被害に遭った男性は、総額38万人民元(約800万円相当)を支払って結婚したものの、わずか29日目に妻が失踪。その後の捜査により、婚活仲介業者、偽の親族、新婦が結託した「芝居」の実態が暴かれた。

悲劇の始まりは、被害者である30代の劉さん(仮名)の母親が、SNSで見つけた広告だった。30歳を過ぎても独身の劉さんの将来は、家族共通の大きな悩みだった。「他省の女性を紹介できる。成功率は抜群に高い」。そんな婚活仲介業者のうたい文句にひかれ、母親はすがる思いでメッセージを送った。

間もなくして、業者から貴州省在住の23歳の女性、小美(仮名)を紹介された劉さん一家は、貯金を切り崩して現地へ赴き、お見合いの席についた。目の前に現れた小美は才色兼備で、劉さんは一目で彼女を気に入ったという。

しかし、お見合いの場そのものが劉さん一家をハメる「舞台」だった。

お見合いの席で実質的に交渉を主導したのは、小美の「兄」だと名乗る男だった。小美はただ隣でそれに従う従順な妹を演じていたが、実際の彼女は未婚ではなく、幼い子を育てるシングルマザー。経済的な困窮に付け込まれ、一味に加担していたのだ。

トントン拍子に話が進む中、婚活仲介業者は当初提示していた結納金26万元に加え、契約の直前になって12万元の仲介手数料を上乗せした。高額だったが「息子の生涯の幸せのためなら」と、劉さん一家は親戚中から借金を重ねて合計38万元を捻出、契約書にサインした。

河南省へ戻った劉さんは、小美と婚姻手続きを済ませ、盛大な披露宴を催し、彼女を迎え入れた。しかし、この結婚式に集まった新婦の「親族一同」も、すべて婚活仲介業者が金で雇ったサクラだった。

そして、幸せな時間は一瞬で破綻する。

結婚からわずか29日、小美は「ちょっと街へ買い物に行ってくる」と言い残して外出したきり、二度と家に戻ることはなかった。

劉さんの通報を受けた警察が資金の流れを追うと、驚がく驚愕の事実が判明した。

劉さんが支払った38万元は、婚活仲介業者を名乗った主犯の個人口座に直接振り込まれていた。お金は即座に山分けされ、詐欺師らの遊興費へと消えていたのだ。その一方で、実行犯になった新婦の小美に渡されていたのは、わずか4万元。彼女自身も「主犯にだまされた騙された」と感じ、警察の捜査が及ぶ前に逃亡していたのが真相だった。

お見合いの翌日に入籍…22日で新妻消える

次に紹介する事件の舞台となったのは江西省。事の発端は2024年11月にさかのぼる。李さん(仮名)は「一刻も早く安心したい、親の願いをかなえたい叶えたい」という一心から、婚活仲介業者に登録。そこで重慶市の張(仮名)という女を紹介された。

二人が知り合ったのは11月12日。そして、なんとその翌日である13日には、すでに入籍を済ませていた。あまりにも拙速な婚姻だったが、李さんは運命の出会いだと信じ込み、その日のうちに結納金12万元を支払い、仲介業者にはサービス料など総額約30万元を支払った。

しかし、偽りの新婚生活は1カ月すら持たなかった。入籍からわずか22日後の12月4日、張は「親族が亡くなったので、お通夜に出る」と言い残して重慶の実家へ戻ると、そのまま二度と李さんのもとへは帰ってこなかった。

そこからだまされた騙されたと気づいた李さんの執念の追跡が始まる。彼は警察へ通報すると同時に、裁判所で離婚訴訟を起こした。

離婚調停のプロセスでは、張の狡猾(こうかつ)な知恵が発揮された。張は法廷で「夫とは関係が良好だったので、離婚には同意しない」と主張したのだ。これは詐欺ではなく、あくまで夫婦間のトラブルだと裁判所に思わせ、刑事責任から逃れる見え透いたうそだった。

裁判所は「交際期間がわずか1日であり、感情的な土台が全く存在しない」として李さんの訴えを認め、無事に離婚が成立した。しかし、事の真相はその直後に判明する。なんと張は、離婚判決が下りた翌月には、すでに別の男性と入籍を行っていたのだ。彼女にとって結婚と失踪は、金を稼ぐルーティンに過ぎなかった。

李さんの執ような権利主張の末、婚活仲介業者は共同正犯としての逮捕を恐れたのか、紹介料など17万元余りの返金に応じた。しかし、張が受け取った12万元の結納金は頑なに返還されておらず、裁判を経て強制執行される見込みである。

こうした女性たちによる結婚詐欺は地方における深刻な女性不足という社会的背景と、高額な結納金という中国の固有文化が組み合わさって発生しているひずみ歪みだといえよう。

次回となる後編では、こうした結婚詐欺が国際的な組織犯罪へと発展している実例をお伝えする。

文/下川英馬 内外タイムス

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