【実録】悪質ぼったくりの手口…泥酔させてクレカ不正利用し、300万円の決済履歴
夜の繁華街で後を絶たないぼったくり被害。
歌舞伎町、六本木、新橋・銀座――東京を代表する歓楽街では、以前から悪質な客引きや高額請求によるトラブルが繰り返されてきた。警察による摘発や行政指導、マスコミによる注意喚起が続いているにもかかわらず、その手口は年々巧妙化している。
近年では、単なる高額請求だけではなく、薬物を混入した酒を飲ませ、正常な判断能力を奪ったうえでクレジットカードを不正利用するという、より悪質なケースも確認されている。
今回、本誌編集部スタッフもその被害に遭った。
仕事終わりに新宿・歌舞伎町で同僚と飲食をした際、女性従業員から勧められたアルコールを口にした後、急激な眠気と意識の混濁を覚えたという。本人の記憶は途中から曖昧になり、気が付いた時には都内の別の場所にいた。後日カード会社から届いた利用通知には、短時間のうちに複数回、合計3,073,400円もの決済履歴が残されていた。
通常、高額決済には本人確認が行われるケースも多い。しかし、被害者本人が店内でカードを操作していた形跡がある場合、カード会社側でも「本人利用」と判断されやすく、補償を受けるまでには長い調査が必要となる。
被害者の多くが「自分で決済した記憶がない」と証言する一方、防犯カメラにはカードを手にする姿が映っているため、立証の難しさも問題となっている。
月に数千万を稼ぐ客引きも
こうした事件について、元警視庁刑事の西見高次氏(現Private Police代表)は次のように語る。
「近年のぼったくりは、単純な料金トラブルではありません。薬物や高濃度のアルコール飲料を悪用し、泥酔させ客の判断能力を低下させたうえで金銭をだまし取る、極めて悪質な犯罪へと変化しています。しかもグループ化しているケースが多く、客引き、店舗スタッフ、決済役が分業していることも珍しくありません」
特に問題視されているのが、“客引き”の存在だ。
「安く飲める」「1時間飲み放題」などと声をかけ、雑居ビルの上階や地下へ誘導する。入店後は法外なサービス料やドリンク代を請求し、拒否すれば威圧的な態度で支払いを迫る。さらに近年では、泥酔状態にさせた客のスマートフォンを操作し、電子決済や送金アプリを悪用するケースまで確認されているという。
また“客引き”の収益モデルもその問題のひとつとなっている。売り上げからのバックの比率が高く、そのマージンで月に数千万を稼ぐ客引きもいるという。
警察に相談しても「民事だから」
このようなシステムについて、現役の客引きは、「歌舞伎町で長くスカウトや客引きをやってきた立場から言うと、正直ぼったくりのやり方は昔からほとんど変わりませんね。被害者が警察に相談しても『民事だから』と流されるケースも少なくなく、現場では半ば当たり前のように見られてきました。現場の人間ほど『本当に取り締まる気があるのか!』と疑問を持っていると思います。あくまで個人的な意見ですが、繁華街特有の見えない力学を感じることはあります」と語る。
警視庁もこうした状況を重く見ており、繁華街での客引き行為に対する取り締まりを強化している。歌舞伎町や六本木では、私服警察官による巡回や、防犯カメラ網を活用した監視体制が進められているほか、悪質店舗に対する風営法違反などでの摘発も継続されている。しかし、摘発されても店名を変え、別の場所で営業を再開するケースも少なくない。
その場から110番通報する勇気を
元刑事は「最も重要なのは、“知らない客引きには絶対について行かない”ことだ」と警鐘を鳴らす。
「被害者の多くは『自分は大丈夫だと思った』と話します。しかし、相手は慣れています。酔って正常な判断ができなくなると、一気に危険性が高まる。少しでも異変を感じたら、その場を離れる。不可能な時にはその場から110番通報する勇気が必要です」
また、万が一被害に遭った場合には、できるだけ早くカード会社へ連絡し、利用停止を行うことが重要だ。加えて、病院で薬物検査を受けることで、後の捜査や補償手続きに役立つ可能性があるという。
華やかなネオンの裏側で繰り返される悪質なぼったくり事件。
それは単なる“飲み屋トラブル”ではなく、組織的な犯罪として私たちの身近に潜んでいる。被害を防ぐためには、利用者一人ひとりの警戒心はもちろん、警察・行政・カード会社が連携したさらなる対策強化が求められている。



