米スタバが日本事業を売却検討 売却額は4000~5000億円規模に
米スターバックス(スタバ)が日本事業の売却を検討していると報じられ、大きな話題となっている。売却額は4000~5000億円規模になる可能性があるとされる。
SNS には早速、「日本からスタバがなくなるってことすか!?」などと、今後について不安の声が寄せられている。しかし、スタバが日本から“なくなる”わけではなく、日本法人の株式が売却されてもブランドは残り、「スターバックスカフェ」としての営業は継続される見込みだ。
日経などの報道によれば、スタバは本国アメリカで、値上げによる客離れなどで不振が続き、人員削減や店舗閉鎖を進めてきた。事業立て直しのための資金確保を急いでおり、日本事業の売却もその一環と見られている。好調で一番高く売れる今のうちに切り売りしようということなのだろう。
実際、今年4月には巨大市場である中国事業の株式60%を投資ファンドに売却したばかり。自前で店舗と従業員を抱える「重い経営(直営)」から、現地のファンド等に運営権を売却してロイヤリティーだけを得る「身軽な経営(アセットライト・ライセンス化)」へ急転換している。
日本はスタバにとって北米以外では初めて進出した市場で、1996年に東京・銀座に1号店をオープンした。約2100店の9割を直営で展開し、スタバの海外事業の中で成功例とされてきた。
ただ、5000億円という金額は、近年の外食関連 M&A の中でも突出しており、買い手はかなり限られてくる。そのため、単独の外食企業が買収するのではなく、中国のように投資ファンドや複数の投資家による出資を募って経営していく形になるのかもしれない。現在のスタイルを残してほしいと考える日本の消費者にとっては、ブランドや知的財産はアメリカ本社が握ってくれていたほうがいいだろう。
スタバは日本や中国以外にもあり、例えば、ヨーロッパ全体(30カ国以上)で3500店舗以上を展開している。最大の市場はイギリスで1100店舗だ。この店舗数を見ても、日本人がいかにスタバ好きなのかがよくわかる。
“アメリカンコーヒー”という言葉が示すように、アメリカのコーヒーには「薄い」「焙煎(ばいせん)が浅い」というイメージが強く、エスプレッソ文化のイタリアや、伝統的なビストロ・カフェ文化のフランスなどではとくに、スタバは冷ややかな視線にさらされた。現在のヨーロッパ市場では徹底したフランチャイズ(ライセンス契約)化とローカライズ化にかじを切って運営されている。
ニューヨークの街角に立つ屋台でコーヒーを買ったことがある人なら誰でも知っていることだが、アメリカ人の生活の中に「焙煎が浅くて薄いアメリカンコーヒー」は溶け込んでいる。そこに1980年代後半から1990年代にかけて、ワシントン州シアトルを中心に発展した「シアトル系コーヒー」が新しいムーブメントを起こした。シアトル系とは、深煎りのエスプレッソベースと多彩なアレンジコーヒーのことで、「スターバックス」「タリーズ」「シアトルズベスト」が代表的なブランドである。
独自の歴史的なコーヒー文化あるいはカフェ文化がなかった日本やアジアでスタバが成功したのは容易に理解できる。いち早く無料 Wi-Fi などを整備して、自宅(第1の場所)でも職場(第2の場所)でもない、「心地よくリラックスして過ごせるモダンな空間」であるサードプレイス(第3の場所)を提供してきたスタバの今後が気になるところだ。
文/横山渉 内外タイムス


