眺望の保全か、開発との共存 住民ら地域の本音を論議 上野地区で意見活発
宮古島市は18日夕、上野地区住民を対象に「景観まちづくりに関する地域住民意見交換会」を上野公民館で開き、南海岸地区の景観を中心に地域の将来像について意見を交わした。自然海岸の眺望や農地の広がりが残る同地区の特性を示し、市民とともに宮古島らしい景観のあり方を考える場として行われた。市は、寄せられた意見をもとに、今後も市民と協働しながら景観の方向性について地域ごとに議論を深めていく。意見交換会は19日に下地地区、きょう20日に城辺地区でも開催される。
冒頭あいさつで下地睦子建設部長は「継続的な発展を目指し、魅力的な観光地であり続けるための将来像について、地域の皆さまの率直なご意見を伺いたい」と述べ、市民参加の重要性を強調した。
市は、南海岸地区の特徴として、標高約40㍍の県道から海へ向かって緩やかに傾斜する地形や、友利ホワイトパーク周辺から望む海の広がりなどを紹介した。
意見交換では、普段の生活で「お気に入りの景観」「残したい眺望」について参加者が次々に発言。道路越しに海が見える風景や、夕日の見える海岸線など、生活に根ざした景観の価値が共有された。
その一方で、観光開発に伴う環境変化を懸念する声も多かった。参加した漁師の男性は「ホテルのライトが強すぎて海が見えづらい。他の海岸に比べても明るすぎる」と指摘。過度な照明が漁場や夜間の景観に影響を与えていると説明した。
建物の高さに関する意見も相次いだ。「できてしまっている建物は仕方ないが、島らしさは道から海が見えること」「海沿いではなく内陸に建てるべきだ。観光客には便利でも、地元には景観の損失となる」との声もあり、海を眺める生活景観を守りたいとの思いがにじんだ。
その一方で別の男性からは「元々、開発がなければこの場所はうっそうとした森林で地元民でさえ近づかなかったと聞いている。今さら景観が自分たちのもののように非難するのはどうか」との意見が寄せられた。
交通に関する課題も挙がった。「上野は細い道が多いが、観光客が増えて事故も増えている。地域との調整が不十分なまま開発だけが進んでいる」との意見もあり、生活環境と観光需要の調和が求められる現状が浮き彫りとなった。


