
夢の深紅旗が沖尚に 15年ぶり県勢の歓喜 比嘉監督ついに夏制覇
第106回全国高校野球選手権大会の決勝が23日、阪神甲子園球場で行われ、沖縄尚学が日大三(西東京)に3―1で勝利し、夏の甲子園で初優勝を飾った。沖縄勢の夏制覇は2010年の興南以来15年ぶり。2年生右腕の新垣有絃と左腕エース末吉良丞が継投で強打の打線を1点に抑え、攻撃では4番の宜野座恵夢が3安打2打点と勝負強さを発揮し、沖縄尚学は春夏通算では3度目の全国制覇を達成。戦後80年の年、歴史に新たな1ページを刻んだ。
試合は初回、日大三が本間律輝主将の適時二塁打で1点を先制。尚学は直後の二回、阿波根裕の左越え二塁打で同点に追いつき、息詰まる展開となった。六回には日大三の山口凌我が出塁を許すとエース近藤優樹がマウンドに。宜野座が近藤から勝ち越し打を放ち、八回にも左中間を破る二塁打で追加点。打線は計9安打で効率良く3点を奪い、最後まで主導権を譲らなかった。投げては先発の新垣が八回途中まで6安打1失点と粘り強く投げ、末吉が九回の一死一、三塁の窮地を併殺で切り抜けた。観客4万5600人が見守る中、守備の堅さと集中打でつかんだ勝利となった。
指揮を執った比嘉公也監督(44)は「選手たちの頑張りに尽きる。沖縄から本当に大勢の声援が力を引き出してくれた」と語った。選手時代の1999年春の優勝投手として沖縄に紫紺の優勝旗を持ち帰った。だがその夏は2回戦で散る。監督としても08年春にセンバツを制した実績を持つが、深紅の優勝旗は遠かった。その悲願がかなった。
主将の眞喜志拓斗は「夢だった全国制覇がかなってうれしい」と涙で喜びを語った。アルプス席で見守り続けた母奈津美さんはこの日が誕生日。優勝インタビューでは息子から感謝のメッセージを送られ、涙で日本一の親孝行を受け止めた。
宜野座も「県民の皆さんの応援のおかげ。感謝しながら沖縄に帰りたい」と感慨深げに語った。
閉会式では15年ぶりに県勢として深紅の大優勝旗を高々と掲げた。ファンファーレ、観客らのウェーブも起こり会場の一体感とともに大会を締めくくった。
沖縄代表として1960年に初めて甲子園出場を果たした首里ナインが、検疫のため土を地元に持ち帰ることができず海に流された悲しい過去、戦争体験者の故・栽弘義監督率いる沖縄水産が2年続けて夏の準優勝に泣いたこともあった。
その栽監督の教え子の金城孝夫監督が沖縄尚学で悲願を成し遂げた。昨年、古希を迎えた金城監督の教え子が歴史を塗り替えた瞬間。また、西東京代表が決勝まで進み、敗戦したのは初めてのこととなった。