ミャークヅツのアラビ(初日)を祝う西原のウヤら =仲間御嶽

盛大にミャークヅツ

 旧暦9月の甲午(きのえうま)の27日、平良の池間島と西原、伊良部の佐良浜で伝統祭祀「ミャークヅツ」が始まった。ミャークヅツは男性を中心に執り行われる集落最大の祭りで、期間中は泡盛に練乳を混ぜた「ミルク酒」を酌み交わして楽しむとともにクイチャーを踊り、子孫繁栄と五穀豊穣を祈願する。今年も男性のウヤらがツカサンマ(神女)と一緒に祈願し、地域住民らと輪になりにぎやかにクイチャーを踊った。池間島と西原は3日間、佐良浜では4日間行われる。

■西原
ナナムイウヤら五穀豊穣祈る 池間島分村150周年記念も
 西原のミャークヅツは、仲間(ナイカニ)御嶽で男性らがアラビ(初日)を祝った。48~55歳のナナムイウヤらが酒を酌み交わしながら子孫繁栄と五穀豊穣を祈願した。
 この日は午前8時ごろから始まった。開会のあいさつのあとインギョウ(卒業)を迎える55歳のナナムイウヤが自己紹介し代表者があいさつ。山里雅彦、山下誠の両市議や西原みどり会の伊良部和則会長らも池間島から分村して150周年を迎える今年のミャークヅツを祝い、今後の繁栄を祈念した。
 西原自治会の仲間忠会長は「ミャークヅツは池間民族の最高の喜びの日。先輩方が継承してきた通りに今後もつないでいくことが大事。(3日間では)マスムイウヤや旗ムツウヤらには決められたことをしっかり行ってほしい」と話した。
 同御嶽ではナナムイウヤらが酒を酌み交わした。1、2年のウヤらは酒などを準備し、長老ら先輩ウヤに酒をついで回りながらあいさつして親交を温めた。
 2日目の「ナカビ」となる28日は、早朝から1年間で生まれた子どもの名前をマスムイウヤらが神さまに報告し、健やかな成長を祈願する「マスムイ」が行われる。午後2時ころからは同御嶽を出発し西原集落を練り歩くパレード後、にぎやかにクイチャーを踊る。終点の広場ではウヤらが奉納相撲を楽しみ、最後はツカサンマ(神女)らも一緒になってクイチャーを踊る。

■池間島
4ムトゥで集い健康祈願 男性55歳以上が子孫繁栄願う
 池間島のミャークヅツは真謝(マジャ)、上げ桝(アゲマス)、前ぬ屋(マイヌヤー)、前里(マエザトヌ)と呼ばれる4つのムトゥ(元)で数え55歳以上の男性らが祈願などを行い、午後からは池間公民館隣の水浜広場に集まり、クイチャーを奉納し、子孫繁栄と五穀豊穣を願った。
 各ムトゥでは早朝から男性らが集まり、踊りや酒を酌み交わしながら互いの健康と無病息災を祈念した。ミャークヅツには島内のほか宮古島や沖縄本島からも参加しており、故郷の祭りを楽しむ姿が見られた。
 前ぬ屋(マイヌヤー)の波平栄利さん(64)は沖縄本島の浦添市から参加した。島を離れて40年になり、55歳からほぼ毎年ミャークヅツに参加しているという。「島にとって大事な伝統行事であり、久しぶりに会う人もいる。今年も参加して良かった」と笑顔を見せた。
 各ムトゥのウヤらは午後4時ごろに水浜広場に集まった。池間自治会の仲間広二会長のあいさつのあとツカサンマ(神女)が祈願し、各ムトゥのウヤらにあいさつした。その後広場中央の「ミャークヅツ豊年祭り」ののぼりを回ったあとクイチャーを踊った。
 その輪に各ムトゥのウヤらが加わり、「ヒヤサッサ」の威勢の良い掛け声で踊った。踊るなかで輪は次第に大きくなり、周囲で見守っていた女性ら住民や観光客も入り、池間島の伝統行事を体験しながら楽しんでいた。

クイチャーを踊るムトゥのウヤら=池間島の水浜広場

■池間添・前里添
繁栄願い「ヒヤサッサ」 33人のミーウヤら祝う

 佐良浜のミャークヅツは池間添の「モトムラ」、前里添の「ナカムラ」の2つの共同体に分かれて行われる。祭祀は男性のみの「ミーウヤ」を中心に行われるが、2つのクイチャーの輪には大勢の地域住民も加わり、「ヒヤサッサ」の声が集落にこだました。会場近くの広場には複数の屋台も出店され、賑やかな行事が佐良浜に戻ってきた。
 モトムラでは数え47歳、ナカムラでは同じく50歳の男性がミーウヤとなる。ミーウヤとは年寄りの仲間入りをする2度目の成人式に当たる年齢で、ことしは池間添11人、前里添22人の計33人。それぞれ広場で、大勢の地域住民ともクイチャーを踊った。
 佐良浜のクイチャーは「ヒヤサッサ」のかけ声で大きく飛び上がって手を叩く。汗だくになりながらにぎやかな行事は続いた。
 前里添ミーウヤの伊志嶺豪さんは「地域の皆さんとミャークヅツを盛大に祝えて良かった。年々人数も少なくなるが、昔からの文化があって、この日は必ず来るので、同窓でも盛り上げて四日間楽しくできたら」と語った。
 池間添の長嶺千一郎さんは「今日迎えるために2年間準備してきた。緊張しているが初日のきょう頑張って、残りも頑張っていきたい。周りのみんなもこの日に向けて盛り上げてくれるので、一生に一度のことなので楽しみたい」、與儀基治さんは「ついにきたかという感想。とても感慨深い」とそれぞれ答えた。

クイチャーを踊る池間添(写真上)と前里添(同下)のミーウヤたち

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