墜落したUH-60JAの同型機(資料写真)

報告書で再発防止策も原因不明 陸自ヘリ事故 知事、市長がコメント

 陸上自衛隊は昨年4月に宮古島北北西洋上で発生したUH―60JAヘリコプターの航空事故について13日、詳細な調査結果を発表した。調査によりエンジン制御系統の異常という「まれな事象」とそれに伴うエンジン出力の低下が原因であることを明かした。また、再発防止策も発表し今後の航空安全確保を図るとしている。
 昨年4月6日、陸上自衛隊高遊原駐屯地所属の第8師団第8飛行隊のヘリコプターが伊良部島北約6㌔㍍海上で墜落し、搭乗した10人全員が殉職となった。
 報告書では事故調査委員会が原因として、第2エンジンのロールバックと呼ばれる徐々に高度が下がる取扱書に記載のない「まれな事象」が起こったことを挙げ、第1エンジンについても出力低下が見られたことから高度保持が困難となったことによる墜落であると結論付けたが、第1エンジンについては明確な原因は特定されなかった。
 「ロールバック」はエンジン制御装置へ空気を送り込む管に異常があった場合に起きるとのことでこれまで自衛隊機では確認されたことがないという。
 そのことから陸自では再発防止策として▽エンジン制御系統および空気圧ラインの点検・検査の強化▽取扱書への緊急操作手順の記載▽搭乗員への教育訓練の徹底―を発表し再発防止策を講じ、航空安全確保のための施策として、洋上飛行時の救命用装備や、フライトデータレコーダー(FDR)用のビーコンの導入が進められる。
 玉城デニー知事は「調査結果を受け、県としては事故原因がおおむね明示され、これに対応した合理的な再発防止策の説明があったものと考えている」と述べ、飛行再開は再発防止策の確認と実施後に行われる予定で、具体的な時期は後日連絡されるとのこと。県は自衛隊の説明に納得し、再発防止策の設定を前提に飛行再開を認める方針を明かした。
 座喜味一幸市長は「原因の特定には至らなかったものの、いずれの要因にも対応可能な再発防止策を講じていく旨の報告を受け、防衛省においては再発防止策として報告のあった緊急時操作手順の普及・徹底や、整備点検等の回数増加などの対策に努めていただきたいと考えている」と述べ、「重大事故からもうすぐ1年を迎えるにあたり、関係者の皆さまにおかれましては、いまだ筆舌に尽くし難い悲しみの中にあると思いますが、亡くなられた隊員のご冥福をお祈りしますとともに、二度と同様な惨事が起きないよう切に願っております」とコメントした。

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