名月夜にマストリャー 勇壮に棒踊り披露 上野野原豊年祭
旧暦8月15日の29日、上野野原で豊年祭「マストゥリャー」が行われた。中秋の名月が夜空を照らす中、会場となった野原農民研修所の庭では男性たちの勇壮な棒踊り、女性たちの踊りなどが繰り広げられ、人頭税の時代から続く地域の伝統行事を受け継いでいた。新型コロナ感染症のため中止が続いてきたが、4年ぶりの通常開催に集落の内外から多くの見物人が訪れ、十五夜の祭りに見入っていた。
マストリャーは約300年の歴史があるとされ、人頭税で穀物税を計量する担当「枡取屋」が語源といわれている。その年の租税の完納を喜び祝い、翌年の豊年を祈願する伝統行事。市の無形民俗文化財、国選択無形民俗文化財に指定されている。
午後9時過ぎには集落内の申・子・午・寅組のマスムトゥ(桝元)から男性たちが徐々に集まり、踊りながら同センターに入場。すべての組が揃うと同40分ごろ、男性たちが掛け声とともに円を描きながら棒を力強く振り、打ち鳴らしながら踊り、これに続いて女性たちがクバの扇や四つ竹を手に踊った。やがて一つの輪になり、豊年を願ってクイチャーを踊った。
申組で参加した洲鎌重樹さん(38)は4年ぶりの棒踊りに「部落のみんなが集まる機会も少なくなった。こうして年に1度、集まるのは楽しい。棒踊りは子どものころから習っていたので4年ぶりでも体が覚えている。年々踊る人は減っているがマストリャーは絶対に無くしてはいけないと思っている。将来、子どもたちにも踊ってほしい」と話していた。
クバの扇を手に踊った下里幸子さん(74)は「みんな普段の生活で精一杯だが、この時期が来ると踊りの練習をやらないといけないという気持ちになる。人数は少なくなったがみんなで責任感を持ってやっている」と述べた。
行事を主催する野原部落会の根間直也会長は「みんなの協力で開催できてうれしい。前回よりちょっと人数は少ないが、みんなで協力しているので良いと思う。高齢化などで後継者不足だが、途絶えさせてはいけないという気持ちをみんな持っている」と伝承への思いを語った。