離島の外来種問題学ぶ 最新研究や事例報告
宮古島市クリーンセンタープラザ棟の「宮古諸島の生物多様性を考える市民講座」が11日、同施設大会議室で行われ、研究者が国内外の離島における外来種問題について最新の研究や事例を解説した。このうち地元出身で酪農学園大学大学院1年の上原佐登さんは宮古島に定着したインドクジャクの食性が希少動物や生態系に及ぼす影響に関して報告した。来場した市民は外来生物の問題と現状、その影響などについて学んでいた。
上原さんは2017~22年に宮古で有害鳥獣として駆除されたクジャクの胃の内容物を分析。103個体を調べたところ内容物の92%が植物質、6・5%が動物質だったが、イワサキクサゼミ168匹が検出された個体もいて動物質に偏るケースもあった。季節に応じて多様な昆虫を食べており、市自然環境保全条例で保全種に指定されている宮古諸島固有種のミヤコニイニイ、宮古諸島亜種のジャコウアゲハが検出された個体もあった。
調査結果から▽宮古諸島のクジャクは植物質中心の雑食性▽動物質割合は産卵期と関係している可能性▽季節に応じて多様な動物種を捕食▽動物質への選好性が高い可能性▽保全種の捕食者である証拠│と考察している。
森林総合研究所野生動物研究領域主任研究員の亘悠哉さんは、離島の外来種を研究する理由について「外来種が定着しやすいが、固有種や絶滅危惧種が数多く生息する。そこにしかいない生物が姿を消す危機であり、外来種は島の生態系最大のリスク」と述べた。
その上で「宮古諸島は外来種が優先する生態系に代わっている。外来種がいることが当たり前になってはいけない。外来種の対策、影響評価、問題の普及啓発のために研究を進めたい」と話した。
この他、同研究所ダイバーシティ推進室長の永田純子さんが「日本の島々における国内外来ニホンジカの移入現状」、同研究所北海道支所主任研究員の松浦友紀子さんが「北海道洞爺湖中島の国内外来ニホンジカ対策計画」、同大学環境共生学類准教授の伊吾田宏正さんが「グアム島の外来ブタの野生化と対策成功事例」を報告した。
今回は7~10日に沖縄本島で開催された日本哺乳類学会2023年度大会で発表した研究者が来島した。