水資源循環実証事業の説明を受ける座喜味市長(中央) =下地与那覇のまいぱり熱帯果樹園

座喜味市長、水の循環実証を視察 排水を複合発酵で浄化

 座喜味一幸市長は7日、下地与那覇のまいぱり熱帯果樹園を訪ね、水資源の循環利用実証実験を視察した。カフェやトイレから出る排水を、化学薬品を用いない複合発酵技術で浄化し、「再生水」を生成するもの。上水使用量削減のためにトイレ洗浄用水として活用しているほか、農業用液肥としての効果検証も行っている。実証は2024年3月末までの予定。宮古島市や東急グループの駅などで、水循環システムを普及することを目指しているという。
 実証は東急・長大・東建産業の3社が共同で実施。まいぱりでは従来、トイレなどの排水を浄化槽処理や塩素殺菌して、地下に浸透させていた。嫌気性や好気性の細菌を用いる複合発酵設備を用いて中水として利用可能なレベルまで「再生」する事業。排水に含まれる窒素化合物を効率的に分解することや、浄化過程での悪臭や汚泥の発生を抑制することができるという。
 まいぱりで排出される水量の内訳はトイレと厨房が1対3の割合。再生水はトイレにのみ使用しているため、余剰分を施設内のバナナなどに散水している。農作物の成長を向上させるための液肥となることや土壌改善、畜産においては生育向上や消臭機能が期待されている。
 循環システムを構築することで、水資源の保全を図ることが事業の目的。国際連合の専門機関の一つである世界気象機関によると、地球温暖化や人口増加などで、2050年に世界で50億人が水不足の状態に陥る可能性があるという。宮古島市でも、観光客の増大による水需要増加が懸念されている。また水資源のほとんどを地下水に頼っている宮古では、水質保全は官民問わず最も重要なテーマに挙げられる。
 実証では今後、オゾンを活用したさらなる水質改善にも取り組む予定。島内だけでなく、駅のトイレなど全国的にシステムを普及させることを目指しているほか、新興国での水質改善も構想している。
 座喜味市長は「これからの観光を含めて水需要が増えていく中、安定して地下水を供給するためにも、水の再利用というのは大きな課題。微生物を活用した浄化技術の確立を目指すことは、持続可能な宮古振興のためにも重要な実証だと思う」と期待を寄せた。

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