ミニシンポジウム開催 自然史博物館
沖縄への国立自然史博物館誘致活動を宮古島市民に周知し、気運を高めようとミニシンポジウムin宮古島(主催・県)が12日、未来創造センター研修室で行われた。県立芸術大学全学教育センター教授の藤田喜久さんが「宮古島を特色付ける地下水・湧水の生き物とその由来」、総合地球環境学研究所共同研究員の当山昌直さんが「宮古の生物文化―天の蛇と神の蛇」と題して講演。参加者たちは宮古固有の生物から考える島の成り立ち、自然と伝統的な人々の暮らしとのつながりなどに関する講演に耳を傾けていた。
藤田さんは、固有種で淡水に生息するミヤコサワガニが過去に海に水没していた宮古島になぜ生息するのか疑問を呈し、沖縄に分布するカニではトカシキオオサワガニが最も種類が近く、氷河期に海面が低下して陸地が広かった頃に渡ったとも考えられるが、宮古島と渡嘉敷島の間には水深約1000㍍のケラマ海裂があり、「海面変化だけでは説明できない。琉球列島の島の成り立ちの歴史と生物分布がうまく合わない現状を見直すきっかけになる生物の一つ」と語った。
宮古の固有種には近縁種の生息地が沖縄諸島あるいは八重山諸島、中国大陸、また琉球列島に全く近縁種がいない生き物もおり、「宮古島の生物相はどうやってできたのか。今は誰も説明できない。分からない生き物が多いことが研究者には興味をそそる。身近な生き物も宮古の成り立ちを考えるとき非常に重要になる」と話した。
当山さんは「昔の人たちは生物の特性を知って活用し、動植物に方言で名前を付けていた。先祖代々伝えられた知識や知恵は伝統的環境知識と言われ、生物文化と呼ばれている。宮古はそのモデルになる可能性がある。人と自然のつながりが大切であり、最近は保全しながら利用することが重要視されている」と述べ、宮古でススキは大きさや用途によって異なる方言で呼ばれることを紹介した。
固有種のミヤコヒメヘビが屋敷内で見つかると丁重に扱い、茅葺屋根の上に逃がす風習について調査したところ、多くの地域で「神の使い」とされていた。方言で虹をティンバヴ(天蛇)と呼ぶことなどから「天に近づけるため屋根に逃がしたのではないか。ミヤコヒメヘビは天の蛇につながる」と説明。「宮古には固有種がいて豊かな生物文化がある。世界自然遺産は奄美、沖縄、西表だが、これをつなぐ宮古があってはじめて琉球弧の生物多様性が分かるのではないか」と話した。
琉球大学副学長の竹村明洋さんをコーディネーターにパネルディスカッションも行われ、自然史博物館のあり方や望むことなどについて意見交換した。