命への真摯な姿勢と後悔のない生き方、言葉が持つ力について講演した =市未来創造センター内中央公民館多目的ホール

死生観テーマに心の処方箋示す 〝生き方〟見つめ直す講演会

 宮古地区医師会(竹井太会長)は6日、市未来創造センターで死生観について考える講演会「納得する生き方」を開いた。がん医療と緩和ケアの現場で多くの「最期」に寄り添ってきた医師の大坂巌氏が命と向き合う姿勢や後悔しない人生を送るための心構え、言葉が人にもたらす力などを語った。参加した市民らは、生き方を見つめ直す具体的な事例に耳を傾けながら、身近な日常の価値や大切な人との対話の重要性に理解を深めた。
 講演は「もしも明日が来ないとしたら」という視点から始まり、大坂氏は緩和ケア医として向き合ってきた多くの患者や家族の事例を紹介した。
 40代女性の夫が「もっと早く知っていればディズニーランドに行ったのに」と悔いた話、治療中の母に本を渡したことで「生んでくれてありがとう」と互いにわだかまりを解消できた家族の経験、東日本大震災で流される直前に母親が子へ「良い人になりなさい」と声を残した事例など、最期の時間に表れる本質的な言葉が人を支えることを伝えた。
 また、入院中の母親が子の作文を読み「普通のお母さんに戻りたい」と語った以後は化粧をして明るさを取り戻した様子や、亡き夫を「ダンディーな方でしたね」と声をかけられた妻がその言葉を励みに前向きに生きた事例など、言葉が与える影響の大きさを示した。
 歩行が困難になった元アナウンサーが、理学療法士の「ハイヒール履きたいでしょ」という一言で前向きになった例も紹介した。
 大坂氏は「言葉は薬になる」と強調し、大切な言葉を書き留め、誰かを思う言葉を掛けることで人を救える可能性があると述べた。後悔しない人生へのヒントとして、死や病気に直面した人々が見せた生き方や、当たり前の日常にこそ幸せがあると語り、会場では涙を拭う参加者の姿も見られた。
 竹井会長は「いつか迎えるその日をどう迎えるかを考える機会にしてほしい。思いを言葉にすることで生活はより豊かになる」と述べた。

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