密閉された香炉が明らかになったアツママ御嶽 =平良西里

「香炉」密閉、あきらかに アツママ御嶽 90年間、使用されず

 平良西里の「アツママ(阿津真間)御嶽」には、ツカサらが拝んでいた「香炉」がある。いつ頃から使っていたかは分からない香炉は昭和10(1935)年ごろに日本軍が密閉して使えないようにしたという。密閉から約90年、現在は拝殿の香炉を使っている。ツカサ以外には知られていなかった香炉の存在について現ツカサの平良豪浩さんが、このほど明らかにした。平良さんは「これを明らかにすることでアツママ御嶽に関心を持っていただいて、老朽化している拝殿の建て替えに結びつけたい」との思いを語った。
 平良さんは40年前、先輩のツカサらから引き継いで祭祀行事を担っている。聞くことによると「香炉を使っていた当時のアツママ御嶽は木々が生い茂り、奥に建てられていた茅葺(かやぶき)の中に香炉を置いていた。ツカサらは宮古の神様を拝むために香炉で線香を焚き、香炉前の広場では踊りも行っていた」と話した。
 その中、日本軍が香炉使用を禁止して密閉し、代わりに神社の拝殿などを作った。突然の行為に当時のツカサらは「国がやることだから黙っているしかない」と耐えたという。
 密閉されたのはベニヤなどで覆われていた場所。平良さんは香炉の存在は知っていたが実際に見たのは15年ほど前。「台風でベニヤが壊れ、その部分から香炉が見えた」と振り返った。
 平良さんの説明から、覆われている壁の隙間から見た香炉は石の上に2つ確認できた。使われなくなり90年、密閉されるまで代々のツカサが管理し使っていた香炉は神聖な場所であり、アツママ御嶽の中心的な存在だった。
 今回、その存在を明らかにしたことについてはアツママ御嶽に関心を持ってもらいたいという思いがあるとのこと。
 アツママ御嶽は、宮古では由緒ある御嶽で「蒲戸金主(ニイラウプティダ・ウプチョウユヌス)と呼ばれる神様を祀り、ヤシキダミ(2月)、ムギブー(5月)、アーブー(6月)、ユークー(9月)などの祭祀を行っている。
 2013年には老朽化と台風被害によって損傷した神殿の改築が行われた。拝殿も老朽化しており、早急な建て替えが必要だ。拝殿の屋根瓦の一部は剥がれ、内部では柱で屋根を支えるなどの対応でしのいでいる状態。平良さんは「香炉の存在を明らかにすることでお詣りに来る人たちに(改築へ)考えてもらいたい」と話した。

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