
領空侵犯常態化を予想 国基研総合安保P 挑発にどう立ち向かうか 尖閣諸島への計画的侵犯 「認知戦」体制強化急務
5月上旬に中国海警の艦載ヘリコプターが尖閣諸島上空で日本の領空を侵犯した事案を受け、民間シンクタンクの国家基本問題研究所(国基研、櫻井よしこ理事長)総合安全保障プロジェクトは同月30日、月次報告会を実施した。報告では中国海警の軍事的能力の向上、計画的な侵犯行動の背景、日本政府の対応の不備を厳しく批判。尖閣諸島における実効支配の強化、自衛隊と海上保安庁の即応体制の整備など、今後講ずるべき対応策を提言した。
月次報告では「中国海警の尖閣上空領空侵犯と日本の対応」をテーマに、中国側の意図と能力、日本政府の対応の課題を言及。中川真紀研究員と岩田清文企画委員(元陸上幕僚長)が報告した。
そのうち中川研究員は、中国海警が事実上「第2の海軍」として機能しており、尖閣諸島を担当する東海海区の装備や行動から、軍に匹敵する能力を備えつつあると分析した。
領空侵犯については「海保が確認し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進して対応した。民間機の飛行に呼応したかたちだが、飛行開始と海警船の領海侵入、ヘリ発艦の時間差はわずか3分であり、あらかじめ民間のフライト情報を把握した上での計画的行動の可能性が高い」とのこと。
中国ヘリによる領空侵犯は、5月3日午後0時21分ごろから約15分間に及んだ。午後0時18分には、ヘリを搭載した中国海警船(2303)が領海に侵入していた。
さらに中川氏は中国が法的根拠や装備を拡充し、法執行と称しつつ軍事的な能力を尖閣周辺で展開しているとし、「海軍基地を海警が後方支援拠点として使用し、領有権主張の既成事実化を進めていることから今後、有人・無人を問わず、ヘリによる領空侵犯の常態化が予想される」と主張した。
また岩田企画委員は、日本政府の対応が「抗議のみに終始し、実効支配が問われかねない」と批判した。
今後の対策として、①尖閣に対する強い施政意思の表明②下地島空港の国管理と自衛隊配置③海保への領空対応能力の付与④中国の「認知戦」に対する体制強化―の4点を挙げた。
また記者質疑では、対領空侵犯措置の権限、尖閣をめぐる主権争いが実質的な安全保障問題であることが再確認され、中国による侵出の現実と日本側の制度的対応の限界を浮き彫りにした。
政府の腰の引けた姿勢が続く限り、主権の空洞化が進む可能性は否定できない。