水不足が懸念、今後の対応を りゅうぎん総研 議論できる「会議体」設置を提言 行政、事務所、市民一体に
りゅうぎん総合研究所(豊田良二社長)は16日、「宮古島市の観光と水問題について」の調査レポートで会見した。観光の現状と水の需給状況の実態について調査した結果、水需要の増加で水不足が懸念されるとして▽節水を意識したリゾート開発▽新水源開発▽事業所がふるさと納税・寄付金などを活用した市への継続的な財政支援▽行政・事業所・市民が一体となって議論する会議体の設置―を提言。豊田社長は「市の持続的な産業発展のための解決すべき課題として関係者全員で水問題に向き合っていくことが望まれる」と述べた。
会見は宮古島商工会議所会議室で行われ、豊田社長が調査に至った経緯を述べ、調査研究部の城間櫻調査員が調査レポートの内容を説明。近年、多くの観光客が訪れるリゾート地として注目を集めている宮古島市の観光の現状、水の需要状況、今後必要な取り組みについて提言した。
同研究所は、「下地島空港を拠点とした国際線やプライベートジェットの受け入れなど今後も観光需要の増加が見込まれる。複数のホテル経営者から水不足が懸念されており、今後の開発に支障をきたすとの声を聞いたことから調査を行った」と説明した。
市の入域観光客数は、2018年度に100万人を超え、新型コロナウイルス感染症の影響で20年度は落ち込んだものの22年度空路はコロナ禍前と同水準まで回復。23年度2月時点の推計値が85万2061人で空路単体では19年度を超えている現状がある。
水需要状況は生活用水、農業用水などの用途別に現状と今後の計画を整理。生活用水は観光客増加に伴い水需要が増加する見込みであり、農業用水もかんがい整備に伴い水需要が増加する見込みであることが分かったという。
市へのヒアリングからは「安定した水の供給のため新水源の開発、施設整備の更新などを計画して取り組んでいるものの主にホテル事業者からの給水希望が大幅に増加しており、計画を超える水需要に対応しきれていない現状があることが分かった」とも説明した。
市は生活用水や農業用水などのほとんどを地下水に依存している。生活用水は白川田水源地の湧水と11カ所の井戸から取水しており、1日の平均給水量や最大給水量は増加傾向にある。用途別では営業用の増加幅が大きく、観光客の急増が一因として考えられるとしている。
新水道ビジョンの給水量の推定値を基にした需要バランスの結果では「取水量は今後増加するものの計画取水量を上回らないとされている。ただし1日最大給水量の推定値は3万4228立方㍍で、現在の浄水場の施設能力(3万4005立方㍍)を超過しており対策が必要。枯渇時を含む災害時でも安定供給できる余裕を持った水源の確保が課題である」と指摘している。
今後必要な取り組みの提言では、▽事業者には再利用水の活用や可能な限りの節水努力を呼びかける▽市は新水源開発や水道設備の更新など給水量の増加と安定化の施策を強化する―。
また、大規模な開発については長期計画を提示させて長いスパンで調整を進め、農業用水の生活用水への転用検討も提言した。