地域住民らは今後の伊良部島の医療について意見交換を行った =10日、伊良部前里添多目的施設

診療所閉鎖で不安の声 徳洲会伊良部島 3月末日撤退に伴い

 佐良浜振興会(中村雅弘会長)は10日、伊良部前里添多目的施設で「伊良部の医療を考える集い」を開催した。この会合は、徳洲会診療所の3月31日をもって撤退することに伴い、伊良部で医療機関がなくなる事態に対する懸念から急きょ企画された。集いには約30人が出席。地元住民からは高齢者の通院方法に関する不安や行政への不満、責任を追及する不信感が噴出した。
 同診療所は2000年1月1日に開院。これまで島内で多くの医療貢献を行ってきたが、15年の伊良部大橋供用開始に伴い、国のへき地認定から外れたことや22年から常勤管理者不在の状況が続いたことで医療法上で診療が困難になったため、宮古島徳洲会病院から派遣することで週に1日半のみ診療を行ってきた。
 中村会長ははじめに「地元から高齢者の通院の仕方について不安の声を多く聞いていたため、集いを開いた」と述べた。伊良部出身の新里匠、仲間誉人両市議や旧伊良部町議の浜川正信さんと洌鎌敏一さんも出席し、現状と今後について説明がされた。
 参加者からは診療所閉鎖により、伊良部大橋を渡る通院の困難さやタクシー利用の負担、難聴者や車イス利用者の移動の困難さ、そして伊良部島に住む高齢者や乳幼児の事情への理解不足などについての意見や、島内の医療機関がなくなることによる過疎化の進行への懸念の声もが相次いだ。
 新里市議は徳洲会診療所を誘致した洌鎌さんら旧町議の努力を称賛し、「本来は行政が動く重要事項なので市民の団結力が大事」と強調した。
 洌鎌さんは「コロナ禍を思い出してほしい。宮古病院と宮古島徳洲会病院でも大変な状況にあり、伊良部に診療所があったからこそ救われた命があり、守られた命があった」と述べ、今後新たな医療機関を誘致するため動いていることも発表。参加者からはその努力に拍手が起きた。
 参加者からは「伊良部にとって良い方向に進むために他の地域でも集いを開くべき」「医療機関を1日でも早く誘致するための組織づくりを急ごう」という意見が出された。

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