気持ちよさそうに昼寝する宮古馬 =城辺長間の放牧場

歴史をつなぐ宮古馬 放牧場の成功に期待

 城辺長間にある宮古馬放牧場が9月から一般に開放されることで、観光などへの積極的な利活用が本格的に開始される。馬は宮古と日本の歴史をつなぐ生きた証しという意味でも大変重要な生き物。大勢の市民や観光客が放牧場を訪れ、事業が成功・発展していくことに期待したい。
 宮古馬は8種類しか現存していない「日本在来馬」の一つ。外国産馬との交配がほとんど進んでいない、日本古来の純血種に近い馬を指す。
 日本に最初に馬が伝わったのは、古墳時代の4世紀末とされる。モンゴル高原の馬が朝鮮半島を経由して持ち込まれ、九州から全国に広まっていったという。宮古や与那国の馬は違うルートで伝来したと考えられていたこともあったが、DNA調査の結果、在来馬8種が共通の祖先をもつことが分かった。
 明治時代以降、国策として軍馬を増強するため、洋種馬との交配による大型化が大規模に行われるようになった。この結果多くの地方で純粋な固有種が消滅。わずかに残った純血種が「日本在来馬」に認定され、各地で保全されている。
 現代の沖縄が日本であることは疑いようもない事実だが、「沖縄史と日本史の接合」という歴史的課題があることは否めない。戦禍の記憶もあり、「本土対沖縄」という対立構造で語られることもある。しかし、馬を通して宮古を眺めると、「1600年あまりの伝統を守る島」として、連綿と続く日本史に内包された姿も浮かんでこないだろうか。
 事業を所管する生涯学習振興課の梶原健次課長は「人間と一緒に生きてきた長い歴史が、馬に反映されている。戦争に長けた体格になる馬もいれば、農耕にたけた体格の馬もいる。宮古の歴史が宮古馬の姿に反映されているという意味でも貴重な文化財であり、大切に守っていかなければいけない」と語った。
 市は将来的に、乗馬体験の提供も視野に入れているという。放牧場内の菜園で実際に宮古馬を農耕に用いて、採れたニンジンなどを餌やりに活用してはどうだろうか。

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