宮古産マグロの解凍実験をする栗山組合長(手前)ら =提供・宮古島漁協

特殊冷凍システム導入へ 不利性解消で実証事業 平準化・販路拡大目指す

 宮古島漁業協同組合(栗山弘嗣組合長)は現在、県の離島不利性解消事業にかかる一括交付金を活用して、生と変らない鮮度・おいしさを保つことができる特殊な冷凍システムの実証導入を目指し取り組んでいる。季節による魚類価格の平準化や販路拡大を図り、漁業者の所得向上につなげたい考え。事業を取りまとめる市農林水産部や市議を伴ってこのほど、冷凍システム「CASエンジン」を開発したアビー(千葉県、大和田哲男代表)を訪問した。
 栗山組合長によると、水揚げの多い夏場は魚の値段が下がる一方で冬場は逆の現象が起きることが、漁業者が年間を通して安定した収入を得るための課題になっているという。冷凍しても生と変らないおいしさを保つことができる「CASシステム」に注目し、実証導入に向け視察を行った。
 CASとは「細胞を生かすシステム」の英語略。通常は食品を冷凍すると細胞組織が破壊され、解凍した際に水分が流れ出してしまうが、CASは組織を保護しながら凍結することができるという。東京の築地市場(当時)のセリで、CASで冷凍したメバチマグロが通常の冷凍品の2倍の値段で落札されたことがあるなど、市場では既に高い評価と実績がある。
 視察の前にアビー社に宮古産のマグロとクルマエビを送付。CASで冷凍してもらい、解凍・試食実験を行った。同行した市職員や市議の粟国恒広氏、狩俣勝成氏は一様に、おいしさに大変驚いたと話した。
 同漁協は交付金を活用した実証に取り組むため、リースでの導入を検討している。栗山組合長は漁業者だけでなく、農業を含めた宮古の一次産業全体に効果が期待できると強調。「魚類だけでなく、マンゴーやメロンなど季節の特産品も、年間通して提供することができるようになる。宮古島の農水業全体のパッケージとして、販路拡大に取り組みたい」と話した。
 市農林水産部の砂川朗部長は、座喜味一幸市長が重要施策として進めている地産地消推進への波及に期待を寄せ、「実際に確かめて素晴らしい技術であることが分かった。旬のシーズンだけでなく、一年中宮古のおいしいものを提供できるようになる。実証を行う中で、一次産業全体を巻き込む効果的な仕組みづくりを考えたい」と述べた。

CAS(左)と従来技術による冷凍イセエビの細胞比較=提供・アビー

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