下地島空港周辺用地の明け渡しで開かれた県の説明会 =伊良部公民館

下地島空港周辺用地明け渡し主張平行線

 下地島空港周辺用地利活用事業に伴う耕作中の県有地を農家に明け渡すよう求めている問題で、県土木建築部空港課は16日夜、伊良部公民館で説明会を開いた。参加した農家や地元関係者が耕作継続と県の見直しなど対応を訴えたのに対し、県は第3期利活用公募による7候補事業所の利用予定、さらには琉球政府時代の確認書を強調し、あらためて土地返還への理解と明け渡し確約書の提出を求めるなど、両者の主張は平行線をたどった。
 県は下地島空港周辺の県有地で耕作する農家に対し、51年前の1971年に当時の琉球政府が使用するまで耕作を認める際に「耕作中及び明け渡し時の各補償を行わない」との下地島地主会との確認書に基づき、2024年3月末までに無条件で明け渡すよう求めている。
 説明会で県空港課の奥間正博課長は、第3次利活用公募を踏まえ、「事業実施に当たって県有地を返還する必要がある。返還後の土地をどのように活用するか、土地返還に当たり皆さんの心配が軽減されるよう、忌憚(きたん)ない意見をいただきたい」と述べた。
 下地島での耕作継続を希望する農家(81戸)を代表するという男性は、「耕作地明け渡しで生活できなくなる農家が出る」として段階的明け渡しや、問題となっている観光ゾーンを縮小した上での賃貸契約等による耕作継続、県有地279㌶での実態・意向調査の実施を訴えた。
 県側は、3次公募の7候補事業者が対象となっている土地の全てを使う意向を示していることやゾーニングについて上位計画の土地利用計画で定めているとして「(土地を)段階的に使うかなど調整したい。約束はできない」と回答したほか、実態調査については「明け渡し確約書」に記入欄があるとして12月9日までの提出を呼び掛けるとともに、「補償は琉球政府の確認書に基づいて行わない」と改めて強調した。
 このほか参加者からは、「確認書にあるから無条件に渡せといっている。下地島の土地を喜んで差し出したわけでない。原点は振興策で農家が救済されるということ。農家の思いをくみ取って、納得する答を出してほしい」との厳しい意見もあった。
 奥間課長は、21世紀ビジョンで下地島空港の航空クラスター事業を位置づけ、「次の世代に財産を残したい」とし、今後については「事業者と話し合い、情報が分かり次第、報告する」と述べるにとどめた。

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