アヤグで宮古を治めた シンポジウムで歴史紹介
宮古伝承文化研究センター(佐渡山安公所長)は24日、池間公民館で、宮古の伝統祭祀の中で歌われる神歌・アヤグの伝承を目指して第15回シンポジウムを開いた。ミュージシャンユニットNuFu―NuFuの荻野鉄也さんと瀬名波令奈さんが、宮古の代表的な子守歌「ばんがむり」などのアヤグを演奏したほか、副所長の居駒永幸さんが「英雄と美女のアヤグ」と題した基調講演で、歴史を伝えるために作られた「長アヤグ」を紹介した。
佐渡山さんは「地域の祭りが衰退しているが、祭祀が途絶えてしまうと神歌、アヤグを伝承する場がなくなってしまう」と危惧。同センターのシンポジウムで元ツカサたちにアヤグを歌ってもらう取り組みを行っていたことを紹介し「高齢化が進みそれも難しくなった。荻野さんと瀬名さんの2人に歌ってもらうが、アヤグを継承し地域に還元していきたい」と語った。
萩野さんと瀬名さんは、「ばんがむり ぷどぅわーさーば ヨーイヨイ」と広く歌われていたあやし歌や、池間民謡に伝わる「イキヌプーヅ(船漕ぎのうた)」など7曲を披露した。
明治大学名誉教授でもある居駒さんは、15世紀末から16世紀初めにかけて宮古を治めた仲宗根豊見親の先祖に当たる目黒盛豊見親の時代から、宮古にはアヤグを作るアヤゴ部(べ)という機関があったという歴史を講話した。
居駒さんは「宮古を治める機関の中に、歌を作るアヤゴ部と、踊りを作るンドリ部があった。奈良時代に雅楽寮、『うたまいのつかさ』というものがあったように、音楽で国を治めるというのは律令制度のはるか昔からあった」と述べ、「宮古を治めるための必然として、アヤグはどんどんできていった」と語った。
例として仲宗根豊見親を称える英雄のアヤグと、イキヌプーヅに伝えられている神女のアヤグを紹介。「修辞が取り入れられており、非常に長い。長アヤグと呼ばれているが、こういったものが民間から自然発生的に生まれてくるとは考えにくい」と説明した。慶世村恒任著の『宮古史伝』でこういった歴史的背景が学べるという。
シンポジウムではロシアのニコライ・ネフスキーが記録した、宮古と八重山の鳥にまつまるアヤグの比較紹介も行われた。