井上美香のあんちいーやー⑯廃タイヤの行方

 車好きな父から譲り受けた4本のタイヤ
 愛車マニアが好みそうなホイールがついていて、福岡の実家から飛行機の預け荷物で宮古へ運んできた。思い入れのあるタイヤだ。
 月日が経ち車が廃車の時を迎え、業者にひきとってもらった際、まだタイヤは使えたのでタイヤだけ外して自宅へ持って帰ってきた。新しい車に合うかなと思った素人考えが甘かった。

廃棄物処理場で破砕された廃タイヤ

 残念ながら新しい車にはタイヤのサイズが合わなかった。屋外に放置していたので、1月に処分しようと廃棄物処理場へ搬入したら、タイヤの引き取りができないと断られてしまった。建設ラッシュで建築資材の大量搬入で木材を破砕するのにタイヤを破砕する機械が同じことが理由だと言われた(現在は搬入可能但し大型タイヤは不可)。
 それならばと、タイヤ販売店へ行くとその店で買ったものでないと引き取ってもらえなかった。ホイールがついたままでは処分もできないので、ホイールを外してもらうと、ホイールはアルミ素材だったので産業廃棄物処分場で買い取ってくれた。だがタイヤは宙に浮いたままだった。

廃棄物処理場に持ち込まれた大量のタイヤ

「そもそも、離島でタイヤの処分はどうしているのだろう?」

 気になった私は離島のタイヤ事情をリサーチした。話を伺ったのはタイヤ販売店、レンタカーのタイヤ交換行っていて自家用車よりタイヤ交換の規定が厳しいので約15年前を比べると処分する量が3倍に増えていると語る。
 カーディラーさんは人口の増加と共に当然車の保有台数も増えるのは一目瞭然だと語る。
 沖縄総合事務局陸運事務所の報告によると、宮古は自家用車3万3712台、貨物1万6021台(2021年3月末)、タクシー190台、レンタカー3202台(20年度)など。タイヤは4本ないと走らないのでこの台数がタイヤ交換をしたとして台数かける4本、膨大な廃タイヤの量だ。
 大型タイヤを取り扱うタイヤ販売店オーナーさんはマニフェストに基づき、自分の店で購入したタイヤに関しては引き取り、12フィートのコンテナに約60本のタイヤを月に4回、沖縄本島の産業廃棄物処理業者へ船で送り、製紙工場で使う燃料(サーマルリサイクル)にするという処理を行っている。
 廃タイヤを運搬するには産業廃棄物収集運搬許可証を沖縄県からもらわなければならない。私たちも車を所有しているのであれば足となりいろんなところへ運んでくれた靴のような役割のタイヤがどう処分されるのか知っておくことも大切なことだと思う。

 最近ではインターネットで安価でタイヤを購入し、タイヤ販売店や整備工場で付け替えたはいいが古いタイヤを引き取ってもらえないというケースもある。その場合は自分で処分先まで持ち込まないといけない。
 この島で経済を循環させアフターフォローも万全な島の販売店で購入する方が後々のことを考えると安全安心にカーライフを送れるような気がする。
 ビーチクリーンでもタイヤが流れ着いたり、草の生い茂る所に不法投棄され、土地を整地するとたくさんのタイヤが掘り起こされることもしばしば。蚊やハエの発生、地域住民の苦情、火災、崩落の恐れなど自然や生活環境の悪化につながることも多い。生活環境保全上、廃タイヤが適正に処理されているかは廃棄物処理法に基づいて行政検査も行われている。

コンテナに積み込まれ沖縄本島に送られる

 日本国内では年間約1億本ものタイヤが廃棄されている。
 島内でリサイクルできないものか?

 産業廃棄物処分場も埋め立てられる土地を増やしたがこのままでは10年もしないうちに満杯になってしまうと危機感を持つ。
 廃タイヤをチップにして専用ボイラーで石炭と混燃させると、通常の石炭ボイラーより窒素酸化物などの排出量を減らせるので環境に優しい燃料として使える機械もあるようだ。産業廃棄物場がその機械を導入してとしてもそのリサイクルされた燃料を給湯ボイラーに使ってくれるホテルなどが増えない限り採算が取れないという。ホテルも新たに機械を導入する設備投資にもコストがかかる。

 一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA)には「原状回復支援制度」という制度があり、自治体による任意の廃タイヤ撤去(含、行政代執行)の撤去費用を支援するという仕組みを作りタイヤ業界も一丸となっている。

 私も車に乗っている時点で廃棄物の排出者であり環境に負荷をかけている。廃タイヤの行方を調べたことにより、行政も企業も市民も一体となって千年先の未来まで暮らしていけるリサイクルの仕組みを真剣に取り組む時だと感じた。

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