ラヴィータが引き出した犬、人馴れするまで個人ボランティアさんの元へ

井上美香のあんちいーやー⑭犬猫の命-NPO法人の絶え間ぬ努力-

 宮古保健所管内における犬猫の殺処分は2020年度ともにゼロだった。2015年に収容された数369頭、返還37頭、譲渡21頭殺処分330頭からは奇跡的な数字だ。その裏側には熱心に取り組むボランティア団体の人々の存在を忘れてはならない。

「NPO法人ラヴィータ」の代表理事呉屋順子さん
 12年前に京都から移住。移住すると同時にノーリード散歩されているを当たり前のように見かけていて、保健所での犬猫の現状を知る。「宮古島の犬を救おう」と言う団体を2017年に設立。保健所からの犬猫の引き出しと里親探しを行っていて1年くらい活動後「アニマルレスキューチーム」として名前を変更して活動を行う。
 宮古島だけで飼い主を見つけることが困難で、協力ボランティアという譲渡先を探してくれる保護主さんが全国各地にいる。譲渡されるには宮古でワクチンの摂取やフィラリア、ノミ、ダニの駆虫薬を投与してGPSのマイクロチップの装着をし、健康な状態で引き渡される。
 呉屋さん曰く、迷子札をつけること、不妊去勢手術の大切さを多頭飼いやノーリードで散歩ささせてる飼い主さんに伝えている。まずは飼い主さんとどんなことでも相談してもらえる関係性を築き、犬猫が悲しまない結果に導くようにしている。

上野にある「宮古島セーブ・ザ・アニマルズ」の代表中原絵梨奈さん
 スタッフは2人ボランティアは10人ほどで運営している。3年前は犬120頭、猫60匹を保護していたが現在は半分に減らすことができた。
 全国区の人気動物番組に取り上げられたことなどから注目を浴び全国から物資の提供や寄付金で6割が賄われ4割はグッズを販売、犬猫用品専門店を運営するなどの代表の収入を投じ、土地も個人で購入している。施設も塀を高くしたり、防音扉で2重構造にしたり、ゴミは午前中に収集に来てもらえるよう最善を尽くしている。
 目標はこのシェルターの縮小。シェルター内、避妊去勢手術を行える動物病院を開設。現在は島外から獣医師を招致。常駐でこの島に住んでもらえる獣医師も募集している。
 絵梨奈さんは「保護して終わりではない。里親さんが見つからなくても看取る覚悟はできている」といつも思いがぶれていない。
 犬猫と接する毎日は、この命を救いたいというより、犬猫たちから「人間たちしっかりしろよ。」と言葉は発しなくても思っているように感じると語る。

宮古島セーブ・ザ・アニマルズのスタッフ、ボランティア

新しく立ち上がる「NPO法人ねこハピ」の代表理事大出恵理子さん
 東京から移住16年。最愛の猫が6月に亡くなり、実のお母さんの介護が今年スタートした。介護も生活の中に入り、生活のリズムを考え直していた時、お母さんのケアマネージャーさんからの相談が舞い込んで来た。
 独り暮らしのお婆が入院して家には飼い主が居なくなったシニア猫が2匹取り残され、猫を飼ったことのなかったケースワーカーさんが恵理子さんに相談したことがNPO法人を立ち上げようとしたきっかけだ。
 犬猫を飼ったことのない人にはそれぞれの習性や飼い方がわからない。そんな時どこへ相談したらいいのか?保健所に引き渡せば里親が来ない限り死が待っている。
 移住したころ、恵理子さんは平良市外に住んでいたが、猫を飼っていることを知っている近所の子供がおじいがどこかに生まれたばかりの子猫を捨てに行ったから一緒に探して欲しいとか、畑に捨てられていた猫を発見したり、野良猫が車にひかれていたりと悲しい出来事を目の当たりにしていた。
 背中を押されたように今回猫に特化した保護団体を立ち上げる。
 これからは猫と触れ合えて猫のことを理解できイベントなども開催して楽し生き物の命の大切さを学べる場所を作りたいと語る。

ねこハピのメンバー(左から)砂川隆樹さん、代表理事大出恵理子さん、川満歩さん、代表理事堀金芳美さん

 猫の繁殖可能年齢は6カ月で一度の出産で平均5頭出産できる。お母さん猫も離乳すれば2カ月で妊娠可能になるので、島内にはTNR(捕獲器などで野良猫を捕獲し不妊去勢手術を行い元の場所に戻す)活動を行ってくれているボランティアもいる。
 宮古保健所の抑留収容情報が写真付きでホームページから確認できるので、迷い犬や迷い猫を引き取りにくる飼い主も昔よりは増えて来たそうだ。宮古保健所は殺処分の多かった2015年から比較すると譲渡促進に繋がる医療行為を行うために県の予算も増やしているという。
 あなたのお住まいの周辺に飼い主のいない犬猫はいないだろうか?無責任にかわいいからと言って餌をあげていないだろうか?
 殺処分の根本解決は保護する犬猫を減らし、蛇口を閉めることだ。これ以上道路でひかれている猫を見たくない。野犬化している犬を見たくない。
 NPO法人の人々や行政の負担だけでなくも市民も野良犬猫化させないように、少しでも協力し合いアクションを起こすことが宮古の課題解決だと感じた。

偶然遭遇した久高美愛さん。近くの空き家に住み着いていたネコを保護して飼いはじめたそうだ。島を変えるのは子供たちの教育から

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