佐々木有希さんと長男・丈介くん、次男・敢ニくん

井上美香のあんちいーやー⑦島暮らしの本当の豊かさとは

 私が移住してきた時からの友人、宮古生まれで砂川育ちの大学四年間の神戸生活以外は宮古暮らしの佐々木有希さん(39)。数ヶ前から、自宅と実家の5キロの道のりからゴミを無くしたいとポイ捨てゴミを拾いを始めた女性だ。

 幼いころは両親ともに共稼ぎで、一人の時も流れる雲を流れていくのをぼーっと眺めて癒やされて、暗くなるまで外で遊び、両親がいない時間は宮古の自然に育ててもらった。父は忙しい中でも休日は漁港を巡ってドライブしたり海で一日中過ごし釣った魚をアルミホイルで包み焼きを食べたりして特別な思い出として今でも胸に残っているそうだ。

 結婚して8年。おうちの暮らしぶりはと言うとエコロジー。
 幼稚園の教諭の免許を持っている有希さん。食器や家電を置く棚はご主人の手作り、家にぴったりあったサイズ感。ものを買う時は長く使えて、素材にこだわり、なるべく土に還るものでプラスティク製品は避けよく吟味する。

夫婦で晩御飯を作る日もある

 食べ物はフードマイレージがかからない地元のもの、無農薬なのものをなるべく選ぶ。残飯は少しでもゴミを減らすためダンボールコンポストと土嚢(どのう)で堆肥を作り出した。ベランダはまるで研究室⁉︎おかげで燃えるゴミ出しは週1回出すだけでよくなったそうだ。
 晩御飯はみんなでそろって「いただきます」と会話する声だけが響く。テレビは置かない。テレビがあるとついつい見てしまい時間を消費してしまうから食後はお父さんと息子の将棋対決。最近はハンディをつけると父が負けてしまうくらい息子が上達してきた。

父と息子の真剣勝負!

 四方に窓があり風がよく抜ける団地。
 電気はあまり使わない生活を好んでいる家にはクーラーがない。
 寝るときは蚊帳を張り家族が川の字に寝る。
 このような暮らし方になったのは夫 悠介さんの影響もあると有希さんは語る。悠介さんの父は転勤族で小学1年から3年生まで宮古島で暮らしたことがあった。大人になってからは那須にある「非電化工房」でエネルギーとお金がなくても豊かになれるという理念のもと、食料から建物まで全て自分たちで作る生活をしていた。
 福島の無添加の調味料でのベジタリアン対応の創作穀物菜食のレストランで働いたこと経験もある。その福島で震災を経験した悠介さんは不思議と何の不安もなく、やっと自分の経験を生かす時が来たと未来は明るく、さあどこに住もうと思って選んだのが幼少の時に育った宮古島だった。有希さんは悠介さんの自然を愛する心と知識や経験の豊富さに惚れて結婚した。

 有希さんは島を離れたとき、空の広さや海の青さ、島独特の時間の流れや空気感や人のあたたかさが恋しくてたまらなくなったそうだ。自然が優しく自分を守ってくれていたからこの島の自然を大切にしたいという思いが強く沸き起こる。
 この島で育つ全ての子供達にとっても美しい景色が豊かな心を育むはず。ゴミで汚れてしまった景色をみて純粋な子供達の心はどうなってしまうのか?
 そう思うとポイ捨てを拾うことは、地域の子供達の心を育てているのと同じで、ポイ捨てを拾うモチベーションにもつながるのだと話す。
 私も住まわせてもらっている島をもっと愛そう、海のゴミを拾い続けようとがぜんやる気が出た。有希さんの丁寧な暮らしぶりに触れ、たまには車で通る道を歩いてみたり、涼しい夜長にはクーラーは入れず夜風に触れ、月や星を眺め、大切な人と心から向き合い、スマホの電源をオフにしてみよう。本当の島の豊かさも環境に負荷をかけない暮らしもすぐ足元にあるように思えた。

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