商品名から海洋保全を問題提起しているサンゴに優しい日焼け止め

井上美香のあんちいーやー⑥その日焼け止め大丈夫?

 2016年エルニーニョ現象の影響と台風があまり来なかったことが重なり宮古島の周辺のサンゴの69㌫が白化し31㌫が死滅したことはみなさんの記憶に新しいと思う。

 同年、シュノーケルガイドをしている女性と出会った。
 悪天候な日以外ほぼ毎日のように海に潜り宮古の海をこよなく愛し、海の中の環境の変化を敏感に肌で感じていた。彼女は白化現象前から、サンゴにも海の生態系にも負担をかけない日焼け止めを利用するよう周りの人々に訴えていた。

 そのころはまだまだ日焼け止めがサンゴに生態系に影響を及ぼすなんて海はこんなに広いのに?と半信半疑で積極的に使う人も少なかったようだ。

 彼女が勧めていたのは沖縄本島出身の呉屋由希乃さんがクラウドファンディングで資金を集め独学で自分が納得できる成分にたどり着き科学者の検証も取得し、安全面を確認して
できたその名も『サンゴに優しい日焼け止め』だ。

商品名から海洋保全を問題提起しているサンゴに優しい日焼け止め

 最近では訪れた島で手軽にワンコインでクリーンアップに参加できる「マナティプロジェクト」という仕組みを構築し、注目を集めている女性だ。この日焼け止めを作ったきっかけは沖縄本島の国定公園でシュノーケルをする前に市販の日焼け止めを塗っていた際ガイドのダイバーさんに「サンゴが死んじゃうよ」と言われたことからだと言う。
 海洋生物学者たちは日焼け止めに含まれる特定の化学物質が海のサンゴ礁の白化を引き起こして生態系全体にも深刻な影響を及ぼしていることを指摘。実際年間1万4000トンもの日焼け止めが海に流れ込んでいると言う報告もある。

 国が変われば、サンゴ礁に囲まれたパラオでは2020年1月、指定成分(10種類*)を配合した日焼け止めやスキンケア製品の販売や使用が禁止され、販売した場合1000ドル(約11万円)の罰金が科せられる。観光客が指定物質を含む日焼け止めを持ち込むと没収される。
 ハワイやカリブ海では2021年1月からオキシベンソン、オクチノキサートが入った日焼け止めの販売が禁止になった。

ハワイ州の条例もクリアしているハワイ産Little-Hands-Hawaiiは宮古島のマリンレジャーショップマーレクルーズのガイドスタッフも愛用している

 国の名勝、天然記念物に指定されている八重干瀬。そのサンゴ礁群に最も近い島のマリン業者15業者が所属している「池間八重干瀬会」は今年から加入業者に呼びかけ「サンゴに優しい日焼け止め」を会でまとめて購入し、7業者が訪れた観光客にこの日焼け止めを利用を促す取り組みをスタートさせた。独自で、サンゴを蹴らない、触らない、餌をあげないなどのリーフレットも製作してこれ以上サンゴや海洋生物にストレスにならないようアクションを起こす。

 コロナ禍前の2019年には宮古島の観光客数113万人となった。美しい海をこの目でみたいと気軽にスキンダイビングなどで海に入る人も増えてきた。
 それは海中の生物にとってかなりのダメージを与えているのはこの宮古の海と密接に関わる人なら明らかに感じていることだと思う。
 市民も、この美しい海を利用して商売をする人も、観光業に携わっている人も、観光に訪れる人も海の環境に配慮したものを選択することが、海へのそして地球への感謝ではないだろうか?5年前出会った彼女は島を出てしまったが、あの時の純粋なこれ以上宮古の海へのダメージを加速させたくないと言う思いは今やっとSDGsの社会的な動きで追いついてきた。宮古島産の日焼け止めができるのも近いだろう。

『locana』宮古島のリゾートホテルのアメニティに世界基準をクリアした次世代日焼け止めがお目見えする日も近い

 人や社会、環境に配慮した消費行動の「エシカル消費」をサンゴに囲まれている島だからこそ真剣に考えたい。

*オキシベンゾン、オキチノキサート、オクトクリレン、エンザカメン、トリクロサン
メチルパラペン、エチルパラペン、ブチルパラペン、ベンジルパラペン、フェノキシエタノール

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