森友事件から10年(第2回)安倍首相と松井知事の「蜜月関係」、8億円値引きのカラクリとは
第1回では、世間が「大手新聞のスクープ」や「スター記者の功績」と誤認している森友学園問題の、本当の「ゼロの瞬間」について、最初の告発者である豊中市議会議員・木村真氏の生々しい証言を追った。2017年2月8日の提訴を契機に、ようやくメディアが本格的に動き出し、日本中を巻き込む大騒動へと発展していく。
第2回は、木村氏がさらに核心へと踏み込む。世間を騒がせた「8億円値引き」の本当のカラクリ、本来なら申請すら不可能なはずだった私学認可がいとも簡単に覆った大阪府の闇、そして当時の安倍晋三首相と松井一郎大阪府知事の間にあった「蜜月関係」の正体について、一問一答形式で深くえぐり出していきたい。(内外タイムス・角田裕育)
森友事件から10年(第1回)発掘者・木村真氏が語る「巨大なドミノの最初の一枚が倒れた瞬間」
「8億円値引き」のカラクリ――疑惑ではなく「明白なファクト」
――2017年2月の提訴以降、国会でも連日この問題が取り上げられ、報道は文字通り狂騒曲の様相を呈していきました。当時、世間やメディアは何を最大の焦点として騒いでいたのでしょうか。
木村真氏(以下、木村) 世の中的な最大の関心事は、やっぱり「あの桁外れの値引きに、まともな根拠があったんか?」という点やったわけよね。鑑定価格が9億5600万円もする一等地の国有地が、最終的に1億3400万円という、タダ同然の値段で払い下げられていたわけやから。その差額、実に約8億円。国や役所は「土地の下から大量のゴミが出てきたから、その撤去費用を差し引いた正当な価格だ」と言い張ったわけやね。
でも、そんな言い訳が通用せえへんことは、当時から僕らの間では分かりきってた。ありもしないゴミを「あったこと」にして、その辻褄(つじつま)を合わせるために財務省の官僚たちが公文書をシュレッダーにかけたり、データを破棄しまくったりしたんやね。すべては国会での虚偽答弁を守るため、もっと言えば「自分も妻も関わっていたら、首相も国会議員も辞める」と大見得を切ってしまった安倍首相を守るために、組織ぐるみで動いていたというわけ。世間はこれを「疑惑」と呼んだけど、僕らからすれば、最初から疑惑でも何でもない、「明白なファクト」やったんですよ。
――「疑惑ではなく、明白なファクトだった」と言い切れる根拠は、具体的にどのあたりにあるのですか?
木村 だってね、安倍首相の妻である安倍昭恵氏が、この問題のド真ん中に関与していたことは、客観的な事実を見れば一目瞭然なんや。昭恵氏の公設秘書だった谷査恵子という人物が、籠池(泰典・前理事長)側からの依頼を受けて、近畿財務局に対して直に価格交渉や借地期間の延長について問い合わせをしていたんや。この事実自体は、後に安倍昭恵氏サイドも認めざるを得なくなって公式に認めているんよね。
それから、値引きの根拠とされた「8億円分のゴミ」やけど、これも実際には存在しなかったことが、後々の調査や、実際に現場で作業をしていた森友学園の工事関係者らの証言によって完全に裏付けられてるんや。「国から『ゴミがたくさんあったことにしてくれ』と口裏合わせを求められた」と、当事者たちがはっきり認めているんやから。9億の土地が1億になるなんて、普通の行政手続きでは100%あり得へんやろ? カネの流れと人間の動きを見れば、そこになんらかの強烈な「天の声」が働いていたことは、これ以上ない事実なんや。

私学認可の基準引き下げ――大阪府が演じた「もう一つの主役」
――土地の売却という「国の問題」にスポットが当たりがちですが、そもそも森友学園が小学校を設立するためには、大阪府による「私学認可」が必要だったはずです。この認可プロセスについては、どのようなゆがみがあったのでしょうか。
木村 そこがめちゃくちゃ重要なポイントなんや。実はな、本来のルールに照らし合わせたら、森友学園は私学認可の「申請すらできへん」はずの存在やったわけ。当時の大阪府の認可基準やったら、学校を新設する場合、財務的なリスクを避けるために「借り入れ金があってはならん」とか、「土地は自前のものでなきゃアカンわけです、借地は認めへん」っていう、めちゃくちゃ厳しい大原則があったわけ。学校が途中で倒産したり閉鎖されたりしたら、通てる子どもらが路頭に迷うことになるから、この基準は当然の防衛策やんか。
ところが、当時の松井一郎大阪府知事が、この絶対的なはずの許認可基準を「規制緩和や」とかいう大義名分を掲げて、突如として引き下げよった。要するに、森友学園が借地であっても、借金まみれであっても、小学校設立の申請を受け付けられるようにルールそのものを変えてもうたんや。まさに「森友学園のためだけに用意されたピンポイントの規制緩和」やったと言わざるを得んよね。

――大阪府の私学審議会では、当時すんなりとこの認可が通ったのですか?
木村 いや、そんなわけあらへん。審議会の議事録やら関係者の話を洗ったら、当初は委員たちから森友の財務状況や教育内容に対して、「本当に大丈夫なんか」「あまりにも危険すぎるやろ」っていう慎重論や反対意見が続出しとったらしいわ。当然の話やんか。
ところが、当時の大阪府私学審議会の会長やった梶田叡一氏や、府の私学課長らがやな、「色々とご意見や懸念はありますけど、そこは今後も府に対して随時問題点を報告してもらう、っていう形にすることで、この場はよろしいですか」みたいな調子で、強引に話をまとめて認可適当の答申を出してまいよったんや。
――その強引な取りまとめを主導した梶田叡一氏とは、一体どのような人物だったのでしょうか。
木村 この梶田っていう人物のバックグラウンドを調べたら、思想的なつながりが非常によく見えてくる。彼は「モラロジー研究所」っていう倫理道徳の研究団体に関わっていて、保守系の教育団体である「日本教育再生機構」の八木秀次氏らと一緒に、道徳教育に関する著書を何冊も出しとるような人間なんや。つまり、典型的な「日本会議」系、あるいは安倍政権を思想的に支えとった右派人脈のド真ん中にいる人間やったわけ。
こうした思想的なお仲間たちが大阪府の審議会のトップに座って、現場の反対の声を押し切って強引に認可のレールを敷いた。要するに、この森友学園問題っていうのは、国(財務省・国土交通省)による不当な土地の格安売却と、大阪府による不当な私学認可っていう、二つの大きな不正がガッチリかみ合って初めて成立した事件なんよ。そんでその背景には、当時の安倍首相と松井府知事の「蜜月関係」が間違いなく横たわっとったわけやね。
――国と自治体、二つの異なる大きな組織を同時に、しかも同じ方向へ動かすというのは、並大抵の力では不可能です。
木村 後に、加計学園問題とかでも文部科学省のゆがんだ行政を告発した前川喜平さんともこの件で話す機会があったんやけど、前川さんも「国土交通省、財務省、そして大阪府っていう、管轄も自治体も異なる複数の省庁や組織を同時にコントロールして、一つの方向にまとめ上げるなんて芸当、首相周辺、つまり政権中枢の明確な意思や関与がなけりゃ絶対に不可能や」と言うとったなあ。ワシもまさにその通りやと思うわ。忖度(そんたく)だけで役人がここまで一線を越えるリスクを背負うわけがないんよ。
森友事件から10年(第3回)映画・ドラマの「虚構」と現場の「リアル」、トカゲのしっぽ切りに遭った官僚たちの悲劇(7日公開)へ続く






