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日本はどうするべきか…オーストラリアの16歳未満SNS禁止は効果薄く、イギリスは制裁金アップ

「私は18歳以上です」

インターネットでこのボタンを押したことがある人は多いだろう。本当に18歳かどうか、これまで誰も確かめなかった。生年月日を入れるだけ、押すだけで通れた。

その時代が終わりかけている。

子どものSNS禁止が世界で加速 日本が「お願い」しかできない本当の理由

イギリスでは2025年7月25日、オンライン安全法にもとづく子どもの保護義務が本格化した。ポルノなどを扱うサービスには「高度に有効な年齢保証」が求められ、自己申告では法律を満たさなくなった。

イギリスの通信規制当局・Ofcomが「有効になりうる」として挙げた方法は七つ。顔から年齢を推定する技術、写真付き身分証との照合、クレジットカード、携帯電話会社の契約情報、デジタルID、銀行口座の利用などである。

規模がすごい。Ofcomが7月15日に公表した報告書によれば、調査対象となった32サービスだけで、2025年7〜12月に完了した年齢確認は6900万件超。その前の半年の23倍だ。Ofcom自身、イギリス全体の実数はもっと多い可能性が高いとしている。8〜17歳が自己申告以外の年齢確認に出くわす割合も、25%から43%へ上がった。

従わなければ金が飛ぶ。Ofcomはこれまでに88の成人向けサービスを対象に23件の調査を開始し、7社・24サイトに制裁金を科している。最高額は8579 LLCの135万ポンド。AVS Groupに100万ポンド、Kick Online Entertainmentに80万ポンドと続く。

不正アクセスの恐怖

一方で、ここでは妙なことも起きている。

守ろうとしているのは子どもだ。ところが、画面の向こうにいるのが子どもか大人かを判断するには、大人の側の年齢も判定しなければならない。「18歳以上です」と名乗るだけでは済まない。顔を撮る。カードを使う。場合によっては身分証を出す。

しかし、そうやって集めた情報そのものが、新しいリスクになってしまうことは否めない。

2025年10月、Discordが、カスタマーサポート業務を委託していた外部業者が不正アクセスを受け、世界で約7万人について、政府発行の身分証画像が閲覧された可能性があることが発覚し騒動になった。

この身分証……免許証やパスポートなどは、年齢判定に異議を申し立てた利用者が、自分の年齢を証明するために提出したものだった。攻撃者は218万件を持っていると主張して身代金を要求したが、同社はこの数字を否定し、支払いも拒んでいる。

これはイギリスの規制によって起きた事故ではない。だが、問題の形は同じだ。Ofcomは今年7月の報告書で、事業者への改善要求を三つ挙げている。指針を全面的に守ること。年齢確認を委託した業者への定期的な監査。そしてプライバシーとデータ保護義務の遵守だ。

3月にはOfcomとイギリスの情報コミッショナー事務局(ICO)が共同声明を出し、年齢確認はどの方式であっても必ず個人データの処理を伴うと明記した。規制する側も、そこが弱点だとわかっている。

パスワードは変えられる。しかし、顔と免許証の番号は変えることはできない。

こうした恐れもあってか、顔や免許証のデータを渡すことを避けようとする者も現れている。中にはゲーム「DEATH STRANDING」のフォトモードに登場する成人男性の顔を画面に映し、顔による年齢推定を突破できたという報告まで出ている。

16歳未満は85.9%から81.5%と微減しただけ

Ofcomの報告書によれば、さらに皮肉な事態も起きている。年齢確認を入れたポルノサイトはアクセスが急減した一方、入れていないサイトは横ばいか、むしろ増えたというのだ。

規制した結果、規制されない場所に客が流れた、というわけだ。

世界で初めて、16歳未満SNS禁止を打ち出したオーストラリアでも困った事態が起きている。同国では、2025年12月10日から、16歳未満が対象SNSのアカウントを作ったり持ち続けたりできないよう、事業者に対策を義務づけた。政府は施行直後に約470万件のアカウントが削除・制限されたと発表し、成果を強調した。ところが、その後3月までに追加されたのは31万件だけだった。

そして3カ月後の政府調査である。対象SNSを使っている16歳未満の割合は、85.9%から81.5%にしか下がらなかった。アカウント保有率は52.4%から42.1%へ。理由もはっきりしている。半数以上の子どもが「年齢を確認されなかった」と答え、18%は16歳以上だと誤判定され、37%は自分で年齢を偽って登録していた。470万件消しても、8割はまだ使っているのだ。

年齢による一律禁止は、掲げた成果ほどには効いていない。突破方法だけが次々と現れているのが世界の現状だ。

イギリスは制裁金アップ

では、日本はどうするのか。

総務省の青少年保護ワーキンググループは7月31日、第一次報告書を公表した。一定年齢以下のSNS利用を一律に禁止することには慎重な姿勢を示す一方、現在は多くの事業者で年齢確認が自己申告にとどまっているとして、サービスの設計や特性に応じた「年齢確認の厳格化」を検討すべきだとしている。

ここで必ず出てくるのが「海外でも失敗しているのだから、日本がやる必要はない」という声だ。国会でも、SNSの自由を理由に年齢規制へ慎重論が根強い。

だが、その理屈は通らない。

イギリスもオーストラリアも、うまくいっていないから規制をやめるとは言っていない。むしろ逆だ。イギリスは制裁金を積み増し、検索エンジンやアプリストアまで巻き込む方向に踏み込んだ。

オーストラリアは実装が甘かった事業者への調査に入った。難航しているのは、やってみて初めて何が足りないかがわかったからである。やらなければ、足りないものが何かすらわからない。

そして日本にも同じ問題がある。子どもがSNSで犯罪に巻き込まれ、有害な情報に沈み込んでいく事例は、この国でも毎年報告されている。自己申告では足りないという結論は、各国の規制当局がそろって出したものだ。

主要プラットフォームはすでに年齢確認の仕組みを持っている。日本だけが「生年月日を入れるだけ」で通れる国として残れば、抜け穴として使われるのはこちらのほうだ。

問題は、やるかどうかではない。どうやるかだ。

身分証の画像を事業者側に溜める設計は危険

先行国の失敗が、そのまま設計図になる。

イギリスが示したのは、一部の業種だけに義務を課しても、確認のないサイトに客が移るだけだということだ。Ofcom自身が、検索エンジンやスマートフォンのOS、アプリストアまで含めた「業界全体の取り組み」が必要だと言い出している。

オーストラリアが示したのは、アカウントを消した件数は成果ではないということだ。半数の子どもが年齢を聞かれてすらいなかった。実装の中身を測り、できていない事業者に手を入れる仕組みがなければ、数字だけが立派になる。

そしてDiscordが示したのは、身分証の画像を事業者側に溜める設計にしてはいけないということだ。EUが進めているのは逆の発想である。最初に電子IDや銀行アプリで年齢を証明し、サイト側に渡すのは「この人は成人だ」という一言だけ。名前も免許証の番号も顔写真も渡らない。

子どもを守るために、大人が免許証の画像を差し出す必要はない。技術的にはもう、そうしなくて済む。

後発の日本には、それを最初から選べるという一点だけの強みがある。

その強みを使わずに、身分証をコピーさせる仕組みを作るなら。そのときは遅れていたことではなく、見ていたのに学ばなかったことの方が問われる。

文/昼間たかし 内外タイムス

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